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ファンタジー/オリジナル・シナリオ

真夜中の炎

1.はじめに

 このシナリオは、初期作成のキャラクター3人用のシティアドベンチャー・シナリオです。「初動捜査」の際に、プレイヤーの注意がどの方向を向くかによって、セッション時間は大きく変動します。早ければ2〜3時間程度、とことんこじれてしまえば5時間を越えることもあるかもしれません。
 シティアドベンチャーは、ダンジョンアタック型のシナリオなどと違ってプレイヤー側の自由度がかなり高いので、セッション時におけるGMの負担は増加しがちです。このシナリオにおいても、GMは「事件」の背後にある真相を知る唯一の者であり、PCたちが起こしたアクションに対して、アドリブを交えつつ臨機応変に対応する必要があります。と同時に、シナリオが想定した落着点へと最終的には収斂されていくよう、セッション全体をコントロールしなければなりません。
 TRPGそのものに不慣れなうちは、このシナリオのGMを務めるのは避けた方が無難かもしれません。基本的には一本道シナリオなので、シティアドベンチャーの練習を兼ねてマスタリングするには適しているかと思います。

 PCの数が多い場合や能力値に恵まれたPCが含まれるような場合には、GMはモンスターの数やレベルを上げるなどしてシナリオ全体の難易度を調整してください。

<調整の一例>
・ケネスと取り巻きの人数を増やす。
・ジヘイが逃がしてしまったモンスターを、ジャイアント・スパイダーよりも強いものに変更する。
・クライマックスで登場するエレメンタルの数を増やす。

概要

 フィールズ孤児院で続発する不審火騒動の真相解明が、PCたちの「仕事」となります。
 ソフィア院長は、子どもたちのことは微塵も疑っていません。しかし、世間からは「素行の悪い子どもたちが良からぬ悪さをするようになった」と陰口を叩かれている様子です。
 院長が主張するように内部に犯人がいないとするならば(つまり、外部の者による犯行だとしたら)、狙いが分かりません。また、犯人がどうやって院内に入ることができたのかも謎です。調べるうちに、怪しげな人物の名はいくつか浮かぶのですが、いずれも決め手に欠ける「容疑者」ばかり。解決の糸口はなかなか見つかりません。
 一体、誰が、何の目的で、このような事件を起こしているのでしょうか。

シナリオのポイント

 放火騒ぎの犯人として怪しげな人物が何人か登場します。彼らの容疑は簡単に晴れますが、PCたちの関心を散らすことで「真犯人」から注意を逸らすとともに、徒労感を煽ってあげてください(笑)。
 基本的には、ジヘイとのコンタクトが事件解決への足掛かりとなります。ジヘイにコンタクトを取るうえでのトリガーは、ダニエルが街中で喧嘩をしていたという情報です。その情報を得るには、町へ出てダニエルについて調べる必要があるでしょう。つまり、あからさまにスケープゴートっぽいダニエルですが、それでも念のために調べようという気になってもらうことが肝要です。GMは、以下のような流れを意識してセッションをコントロールすると良いでしょう。

「フィールズ孤児院で不審火騒ぎが続発している」という情報をPCに与える。
  ↓
不審火騒動の傍らで、他の四元素にまつわる現象を発生させる。
(ナタリーのおねしょ、ソフィアの転倒、割られた窓ガラス)
  ↓
捜査中のPCたちとジヘイとを接触させ、ジヘイに一連の不審火騒動の真相を勘づかせる。
  ↓
ジヘイの情報を引き出す(ジャイアントスパイダー退治)。
  ↓
ダニエルの大火傷、およびナタリーによるエレメンタル初召喚。
  ↓
エレメンタルを斃し、ジヘイとロップイヤーが現れてエンディングへ。

冒頭の準備
 各PCの【聞き耳】【第六感】および「総合LV+IQ」などは、このシナリオに限らずあらかじめ手元に控えておくべき数値です。急に判定ロールが必要になり、なおかつプレイヤーに何かあることを悟らせたくない場合、その時点になって「君たちの【第六感】スキルのLVっていくつだっけ?」などと訊いているようでは、むしろ潔く各プレイヤーにダイスを振ってもらったほうがマシです。

 今回のシナリオでは、PCたちは、フィールズ孤児院はもちろん酒場や魔術師ギルド、盗賊ギルドやスラム街、神殿や旧市街(上流階級区)などを調べたがる可能性があります。GMはあらかじめこれらの概要をワールドガイドを読んで理解しておくと良いでしょう。
 また、シティ・アドベンチャーは、GMの思惑通りに進まなかったりアドリブが必要になることも多いので、登場人物(NPC)の性格やロジックパターンをしっかり把握しておきましょう。それらの人物像をGMなりに解釈して、プレイヤーたちが思いもよらないアクションを取ったときには、「この登場人物ならどういう反応をするだろうか」と想像力を働かせて、適切なリアクションを返さなければなりません(しかも、単にその登場人物にとって相応しい言動であるだけではなく、シナリオの大筋からは逸れないようにストーリーが収斂されていくような効果を持たせる必要があるのです!)

 以下のシナリオ部分には、この事件をとりまく登場人物や、彼らにまつわる情報やイベントが羅列されています。しかし、これらは必ずしも時系列順に並んでいるわけではありません。GMは、以下のシナリオをよく読みこんで、その場その場に適していると思われるイベントを発生させ、PCたちにうまく情報を与えていくようにしてください。

2.事の発端

 最近になって、フィールズ孤児院でボヤ騒ぎが相次いで起こっているという噂を耳にします。今のところ大事には至っていないのですが、3〜5日に一度くらいの頻度で、夜中に室内外を問わず不審火が起こっているというのです。これまでに3回ほどボヤが起こっています(院の外壁で2回、院の二階の廊下で1回)。
 見かねたPCたちが善意で解明に乗り出してくれれば良いのですが、孤児院の経営はギリギリなので、報酬の類はまったく期待できません(寝食くらいは保障してくれるでしょうが)。見返りが全然ないので、PCたちが動いてくれない可能性は十分にありますが、GMはアノ手コノ手でPCたちを事件解決に乗り出すように仕向けてください。
 どうしても良い手が思いつかないようであれば、いささか安直ですが神殿や魔術師ギルドからの依頼ということにしてもかまいません(報酬は全部で20GP〜30GP程度が適切でしょう)。ただし、この場合は誰かが不幸にも大火傷を負ってしまうという「人的被害」が発生していることが前提であり、そうでなければ神殿も魔術師ギルドも腰を上げようとはしません。

3.フィールズ孤児院

ソフィア・フィールズ院長

 ソフィア院長は、子どもたちの安全安心のために真相を解明したいと考えています。しかし、自身が多忙なために思うように進展せず、かといって人を雇うような金もないので困っているのです。
 院内では火の怖さを十分に教えており、院長のソフィア・フィールズとしては、子どもたちのイタズラということは絶対にないと信じているようです。また、孤児たちが外部と目立ったトラブルを起こしたことはないと言います。しかし、世間一般からは「おそらく素行不良の子どもの仕業だろう」と見られているため、そのことでも彼女の心労は絶えません。
 ソフィア院長そのものは、恨みを買うような人物ではありません。
ソフィア
人間/女性/41歳  155cm/42kg 右利き
総合LV4  IQ6 DX5 ST3 WP6 VT5
移動力:10
素手=攻撃:4 PS:−4 C値:−/− 武器受け:− 射程:−
回避:6 楯受け:− 装甲:0 相手のC値:−/−
WP抵抗:17 VT抵抗:16
衰弱11 昏倒23 死亡33
【聖導】10LV

年長の子どもたち

 口々に「ダニエルが怪しい」「あいつが来てから、窓ガラスが割られたり、ボヤ騒ぎが起きたり、おかしなことになってる」と言っています。彼らは、ソフィア院長が連れてきた手前、仕方なく折り合いをつけているようですが、傷跡も仰々しいダニエルという異分子をあまり快くは思っていないのです。
 しかし、ソフィア院長からは「そういう確証のないことで、他人を中傷してはいけない」と言われているので、簡単にはPCたちに「ダニエルに対する不満」を吐露することはありません。立ち聞きするか、うまく子どもたちの心を掴んで情報を引き出さなくてはならないでしょう。

カルロス

 カルロスは、ひょんなことから施療院に居候することになった元盗賊の老人です。元盗賊といっても、ケチなこそ泥の域を出ておらず、盗賊ギルドにも属していないため、投獄されたりという過酷な生活を送ってきました。街の底辺で暮らしてきた彼の生活の慰めは質の悪いアルコールだけであり、荒んだ生活と深酒が祟ったのか、今では内臓を深く病んでいます。余命いくばくもない身ですが、現在のところ、日常生活を送るぶんには申し分のない状態です。彼が逝くときは、急激に症状が悪化して、一気に衰弱してそのまま…ということになるでしょう。
 彼の見たところでは、ダニエルは悪ぶっているけれど根は善良な人間であると感じるそうです。多くの悪党と接触を持ってきた者として、そういう面での鼻は利くんだと豪語しています。
 しかし、カルロスは「ダニエルが根っからの悪人ではないからと言って、今回の件とまったく関係がないとは限らない」と考えています。機会があれば、スラムの生活からの脱出に成功しかけている彼を妬む者もいれば、彼がスラムで起こしたトラブルが絡んでいる可能性だって否定できないと話し、「もっともそりゃあわしの場合にも当てはまるがの。まぁわしはさほど大きなヤマを当てていないし、恨まれるとしてもタカが知れとるわい。老い先短い身体じゃしなぁ」と付け加えます。
 カルロスについては、オリジナル・シナリオ「魔術師の宝」も参考にしてください。

ダニエルとナタリー

 スラム育ちの少年ダニエルと、男性に対して深刻なトラウマを抱える少女ナタリーは、このシナリオのキーマンです。
 特に、ナタリーは今回の「事件」の「黒幕」です。彼女は、エレメンタルとの交信に関して、自分自身でさえも気づいていない才能(優秀な召喚師になりうるほどの)があります。ところが、それを制御する術を知らないこともあり、彼女自身もそうと気づかないまま、睡眠中にエレメンタルの力を引き出してしまうようになりました。これは、ダニエルという特別な存在が彼女の精神面に強烈なインパクトが与えられたことがキッカケとなって顕在化した現象なのですが、今のところはナタリー自身も含めた誰ひとりとしてこの危険な状態について気づいていません。
 一方のダニエルは、もっとも疑われている少年です。不審火の犯人として最有力と目されている彼は、自身の疑いを晴らすために、夜になると院を抜け出して孤児院の周辺を見回っています。このことは誰にも(ソフィアにさえも)内緒にしており、夜間の不在を問われれば「俺が、いつ、どこで、何をしようと勝手だろう」と言葉を濁します。夜通し街を歩くので、昼間はウトウトとしていることが多く、そのことも周りの反感を買っています。
ダニエル
 1ヵ月ほど前に孤児院にやってきた14歳くらいの少年で、ナタリーが心を開く唯一の年上の男性です。整った顔立ちながら、左の頭髪の生え際から額の中央辺りにかけて、一年前の喧嘩で負った酷い刀傷が残っています(この刀傷のせいで、彼の与える第一印象は悪くなりがちです)。
 幼少の頃からこの町のスラムで育ち、大人びた懐疑的な思考がとことん身に付いています。子どものころから荒事の中で生きてきたため、気性が荒く短気で粗野な言動が目立ちます。あまり自分を大切に思っていないくせにプライドだけは高いという、あまり誉められたものではない性格です。しかし、心の奥底では善良でありたいと願っているため、自身の内面に矛盾を抱えて苦しんでいます。
 先入観をあまり抱かない小さな子どもたちは、心根の優しさを直感的に感じ取るのか、彼のことを好いているようです。しかし、同年代や年長の人たちには、あまり良く思われていません。
 院のお使いをしていたナタリーをチンピラから守ったことをキッカケに彼女と親しくなり、それを知ったソフィアが「ナタリーの友人を務める傍ら、院の力仕事を手伝ってくれると助かる」という名目で呼び寄せました。気持ちを素直に表現できない彼は、このことでソフィアに恩を感じていますが、年長の子どもたちと反りが合わないことで、自分はここを離れるべきではないかと悩んでいます。
ナタリー
 12歳の少女。2年ほど前、アル中の父親によって、スラム街のチンピラに安銭で売られた経験があります。かねてより彼女と父親の家庭を気にかけていたソフィアは、すみやかにこのことを察知し、一晩と置かず彼女を救い出しました。しかし、そのときにはすでに彼女はショックで口がきけない状態に陥っており、また、極端に男性を恐れるようにもなっていました。
 今はあまり周り人を寄せ付けず、孤児院の中でも物静かに生活しています。年上の男性を怖がって避けますが、年下の子どもたちの面倒をよく看ることから人気があり、院内での信頼も厚いようです。

3.伏線

 不審火は夜中に起きるということなので、PCたちは孤児院に泊り込むなどして警護ないし調査を行なおうとするかもしれません。その場合、この願ってもいない申し出に、フィールズ院長は喜んで部屋を貸してくれるでしょう。しかし、このシナリオは院内でも進捗可能ですが、捜査そのものは院の外での噂やデマを集めなければ進行しにくいので、昼間はなるべく外での調査に時間を割かせるように誘導したほうが良いでしょう。

 PCたちが孤児院の中で過ごしているときには、GMはタイミングを見計らって以下のようなイベントを起こしてください。

深夜:ソフィアが転ぶ

 夜中にソフィアの部屋から派手な音がします。あわててPCや子どもたちが駆けつけると、ソフィアが床にへたり込んで苦笑いしています。今日中にやっつけたい仕事があったので夜更かししていたところ、突然、燭台の炎が消えてしまい、真っ暗になったのだといいます。あわてて暗闇の中を手探りで移動していたら、うっかり転んでしまったらしいのです。
 「いやあねぇ、ろうそくが湿気てたのかしら」と、大勢の子どもたちやPCたちに取り囲まれたソフィアは、年不相応に愛らしく照れてみせます。子どもたちは自分の部屋に戻りながら「先生、かなり疲れているね」などと心配そうに口にします。
 このイベントでは、「鎧戸も締め切った部屋の中で風が入ってくるはずがないのに突然に蝋燭が消えた」ということが、伏線になっています。

夜明け前:ナタリーのおねしょ

 このイベントは、ソフィアの転倒とは別の晩の夜明け前に発生させてください。夜明け前に、ナタリーがこっそりとベッドを抜け出します。彼女はベッドのシーツを丸めて抱えており、ソフィアの部屋を目指すつもりでいます。冷たい感触にふと目が覚めた彼女は、寝間着とシーツがぐっしょりと濡れていることに気付き、ショックを受けて内緒でソフィアに助けを求めようと思っているのです。
 PCたちが不寝番を置いていれば、当然、彼女の夜明け前の不審な行動に気付くでしょう。彼女を問い詰めるか、後を付けるか、それはPCたちが決めることです。ただし、ナタリーのシーツや寝間着を濡らしているものは、彼女のおねしょではなく単なる真水です。
 万が一、シーツを詳しく調べようという者がいた場合には、尿特有のアンモニア臭がしないことに気付くかもしれません。しかし、その場合でも、誰かのくだらないイタズラか何かだという見方で落ち着くのが自然でしょう(ナタリーのベッドを濡らすメリットが誰にもありません)。もしナタリーのシーツがおねしょで濡れているわけではないことを指摘すれば(それが可能なのはPCだけです。ソフィアは忙しさと疲労のせいで濡れているシーツと寝間着をみれば、おねしょだと信じきってしまいます)、翌日の朝食の際に、ソフィアは「最近は水を撒き散らして喜ぶイタズラが流行っているようですが、我が家にはそんなものは今日を限りに要りませんよ」とおどけて説教するかもしれません。

日中:窓から投げ込まれた石ころ

 ソフィアが少し席を外したとき、施療院に突然の腹痛か何かで救急患者がやってきます。付き添いの男性は、たまたまその場に居合わせたナタリーの肩をつかんで、「先生はどこか」と激しい口調で質してしまいます。このことで、ナタリーは恐慌状態に陥り、泣きじゃくりながら悲鳴を上げて自分の部屋へと逃げ込みます。
 騒ぎを聞きつけたソフィアの指示で、ダニエルはナタリーの後を追ってナタリーをなだめます。彼がナタリーの髪をぎこちなくなでて落ち着かせるうちに、彼女は泣きつかれたのかダニエルの肩に寄りかかって眠ってしまいます。この後、10分前後のあいだ、ダニエルは身動きもできないまま我慢してじっとしていたのですが、しばらくすると、突然、部屋の明かり取りの小さな窓が大きな音とともに割れ、大小の石ころが飛び込んできます。
 ナタリーの悲鳴で駆けつけたときには、床の上に窓ガラスの残骸と、大小の石ころが転がっています。部屋の外は細い路地になっているのですが、窓ガラスに命中しなかったのだと思しき石ころがたくさん地面に落ちています。まだ夕方だということもあり、人通りはそれなりにあるのですが、目撃者は残念ながら見つかりません。
 年長の子どもたちは、やっぱりダニエルが狙われているんじゃないか、とイヤミを言ったりするかもしれません。

3.スラム・裏社会

 PCたちは、もしかすると、ダニエルのスラムの知人や、カルロス絡みの何かを疑うかもしれません。しかしこれらの線はシロであり、もしPCたちがスラムや裏社会に調査の手を伸ばしたとしても、最終的には徒労に終わるでしょう。ダニエルはスラムでも一匹狼的な存在でしたし、カルロスにいたっては恨みを買うほど大それた「仕事」はしていません。

ダニエルを恨む者

 もしスラムや「鉤爪亭」などで聞き込みをすれば、ダニエルの額に大怪我を追わせた小悪党がいることが分かります。彼の名はケネスと言いますが、彼がもし名の知れたゴロツキへと順調に育っていけば、いずれは「隻眼のケネス」と呼ばれることでしょう。彼はダニエルの額に傷跡を残しましたが、自身はダニエルによって左眼を奪われてしまいました。
 彼はダニエルのことを憎んでいて、チャンスがあればいつでもダニエルを殺したいと考えています。しかし、傷が癒えたころには盗賊ギルドの構成員となっていた彼は、表立って「殺し」ができません。そうして攻めあぐねている間にダニエルが孤児院へと引き取られていったので、ケネスはかなり苛立っているという噂です。
 PCたちが何とかしてケネスに接触しようとするなら、GMは、彼が常にスラムの悪童たちを引き連れていることを憶えておきましょう。ケネスは「多勢に無勢」という状況にさえあれば、強気一辺倒で押してきます。彼自身は不審火騒動には何の関係もありませんが、PCたちが疑うような素振りをみせたならば、絶好の口実ができたとばかりに日頃のストレスを解消しようとするでしょう。
 彼らは、PCたちの倍ほどの人数を笠に着て、ニヤけ面でPCたちを取り囲みます。これまで彼らが獲物にしてきた「数的弱者」は、そうするだけで震え上がり、苦もせず蹂躙することができたのです。しかし、今回の相手であるPCたちにとって、彼らを返り討ちにするのは難しくないはずです。ケネスは、累積ダメージが7点以上となった時点で、「待ってくれ、俺たちが悪かった! アンタら強ぇんだな、参ったよ! 許してくれ、もう二度とアンタらに喧嘩は売らねぇから!」と叫んで降伏します。
ケネス
人間/男性/16歳くらい  175cm/60kg 右利き
総合LV1  IQ5 DX5 ST5 WP5 VT4
移動力:10
シミター(5)=攻撃:6 PS:1 C値:2/10 武器受け:6 射程:−
回避:4 楯受け:− 装甲:0 相手のC値:−/−
WP抵抗:13 VT抵抗:12
衰弱14 昏倒24 死亡32

 スラムに住む16歳くらいの少年。一年前、少年グループの「頭」として裏町を闊歩していた彼は、ダニエルを傘下に入れようとして拒絶され、衆人環視の中で見せしめの「公開リンチ」を企てました。しかし、一瞬の油断をついたダニエルの反撃で、逆に自分が片目を失うという大怪我を負ってしまいました。
 一度は失墜しかけたグループ内での権威を、生来の凶暴さと狡猾さで取り戻した彼は、今では盗賊ギルドの末席に名を連ねています(盗賊ギルドのトップが、ケネスの横暴ぶりに眉をひそめ、鈴をつける意味でスカウトしたのです)。しかし、今でもスラムの少年たちを引き連れてスラム街をうろついており、群れては弱者を取り囲んで悪さをしています。ときには「鉤爪亭」に姿をみせることもありますが、組織の中での上下関係が気に入らないらしく、できるだけギルドの先輩と顔を合わせないように行動しているようです。
ケネスの取り巻きの少年たち
人間/男性/十代半ば  165cm/50kg
総合LV1  IQ3 DX4 ST4 WP4 VT4
移動力:9
ショートソード(4)=攻撃:5 PS:0 C値:2/10 武器受け:5 射程:−
回避:3 楯受け:− 装甲:0 相手のC値:−/−
WP抵抗:12 VT抵抗:12
衰弱12 昏倒20 死亡28

 ケネスの取り巻きの少年たちは、重要人物ではありません。全部で5人いますがまったくの烏合の衆であり、少しでも負傷ダメージを受ければ悲鳴を上げて転げまわり、途端に戦闘不能となります(可能ならば逃げ出そうとすらするでしょう)。

4.街中

疑わしい町医者

 街中で情報を集めれば、フィールズ施療院のことをあまり良くは思っていないという町医者がいることが分かります。しかし、このトーマス・ジャクソンという町医者についてさらに調べてみれば、彼はステータスもある人間であることや、放火犯としてはあまりにも動機が薄いことが簡単に分かるでしょう。
トーマス・ジャクソン
 現実家の町医者です。ソフィアの施療院とはターゲット層が違うので競合などのトラブルはありません。しかし、タダ同然で治療をするソフィアのことを「理想主義者」として煙たがっています。
 とはいうものの、彼は基本的には「普通の一市民」であり、ソフィアおよび施療院に対する感情も「憎悪」と呼ぶにはほど遠いものです。

いじめられていた姉弟

 街中では、「ダニエルが、街中で小さな姉弟をいじめていた」という噂が広まりつつあります。しかし、よく調べてみるとこの噂が誤解であることが分かります。
 「いじめられていた弟」とは、ジヘイというミゼットの商人です。そして、「弟を助けようとダニエルに泣きすがっていた姉」とは、ナタリーのことです。
 数日前、ダニエルに付き添われてお使いをしていたナタリーは(ソフィアは言葉を失った彼女に、より多くのコミュニケーションをさせたいと考えています)、偶然見かけた露店に並んでいたシルクのバンダナに手を触れました。彼女は、ダニエルの額の傷を隠すのに素敵だと思い、この美しいバンダナを手にとって眺めようとしたのです。しかし、その瞬間、ジヘイが「こら、お嬢ちゃん! 汚い手で触りなや(触るなよ)! まったく油断も隙もあったもんやないな! 誰やこんなガキに育てたんは。親の顔が見たいわ!」などと酷い言葉を大声でまくし立てたため、傍にいたダニエルがジヘイにつかみかかったのです。
 さいわい、ナタリーが泣きながらダニエルを止めさせたので事なきを得たのですが、ちょっとした騒ぎになったので目撃者も多く、それを見た人の一部が「ダニエルが小さな子の襟首をつかんで持ち上げている」と思ったというのが真相です。そして、その際にかなり乱暴な関西弁を聞いた者がおり、その子どもの保護者あたりが、ダニエルに相当な剣幕で食ってかかっていたらしいという「尾ひれ」に繋がっています。
ジヘイ
ミゼット/男性/33歳  105cm/25kg 右利き
総合LV3  IQ7 DX6 ST3 WP5 VT4
移動力:12
ダガー(3)=攻撃:7 PS:−1 C値:2/10 武器受け:7 射程:10/20
回避:9 楯受け:− 装甲:0 相手のC値:−/−
WP抵抗:15 VT抵抗:14
衰弱10 昏倒20 死亡28
【召喚魔法】10LV(ハーモナイズ:水、水晶の指輪にシール)

 ミゼット族の商人です。怪しげな関西弁とがめつい商法で、金持ちを相手に荒稼ぎをしています。
 各地を旅しながら商売をしており、本人は隠していますが護身のためのスキル(接近戦、召喚魔法など)も十分に習得しています。また、トレジャーハント的な仕事に携わる場面も多いため、偵術にも通じています。
 彼は法をあまり重んじませんが、自身が納得のいったことには出費を惜しみません。気分次第で、善行をなすことも多いようです。

クモ退治

 ダニエルが街中で姉弟をいじめていた、という情報をたどれば、すぐにジヘイに行き着くはずです。そして、ジヘイはPCたちが何かを捜査している様子であることに非常に興味を抱きます。彼は、商売柄、情報の大切さをよく知っており、キナ臭い噂にも敏感なのです。
 ジヘイは「あんたら、何か調べてるんやったら情報の出し惜しみはせんこっちゃ。本当に大事な情報だけココ(と言って自分のこめかみの辺りを指差します)に仕舞っておいて、出せる情報は気前良く出す。情報収集の基本は「情報の交換」や。思いもせんヤツが思いもせんコトを知っていたりするもんや。こう見えても、わいは顔が広い。もしかしたら役に立てるかもしれへんで」と言って、PCたちに話を促します。

 ジヘイに院での奇妙な事象を話せば、彼はおおよそのことを看破します。しかし、何か分かっているかのように匂わせるだけで、タダでは何も教えてくれません。彼は、頼みごとをやってもらうのと引き換えに、彼の知っていることを教えると言います。
 ジヘイの依頼は、うっかり逃がしてしまったジャイアント・スパイダーを始末して欲しいというものです。もともとは魔術師ギルドが研究対象として買い取ってくれる予定だったのですが、納期を逸してしまったので「搬送途中に死んでしまった」と虚偽の説明をしてあるそうです。ですから、「大騒ぎになるくらいなら、いっそ仕留めてくれた方が助かる」と言います。本当ならジヘイ自身が動きたいところなのですが、忙しくて手が回らないのだということです。
 報酬は、口止め料込みで50GP。もちろん不審火騒動についてジヘイが持っている情報も教えるという条件です。

 ジャイアント・スパイダーの巣の在り処については、すでにジヘイが町の情報屋やホームレスを使って調べさせています。それによると、「この町の地下に大きな巣を作っている」のだそうです。
 町の地下には、古代の遺物である地下道が縦横に走っていて、いくつかは下水道や盗賊ギルドの抜け道として利用されていますが、大部分は使われていません。迂闊に潜り込もうものなら迷うことは必至ですが、ジヘイがホームレスを1人案内につけてくれるので、迷路探索を行なう必要はありません。
 もし、ここまであまりにシナリオが順調に進みすぎていると感じるならば、途中でネズミやコウモリを登場させたり、あるいは1LVスライムやヴァイパーなどとの戦闘を盛り込んで時間を調節しても良いでしょう(ただし、ヴァイパーは毒を持っていますので、悲惨な結果に終わらないように十分注意しましょう)。

ジヘイの話の要約

 無事に巨大蜘蛛を仕留めて証拠を持ち帰れば、ジヘイは、本当に済まなさそうな顔をして、「スマン! 急に現ナマが要り用になってもうてな。悪いんやけど、コレで勘弁してくれんか?」と手を合わせます。ジヘイが差し出したのはスクロールです(何本のスクロールが手に入るのか、そしてそれらの呪文LV・系統・呪文名などについては、通常通りのルールに則って決定してください)。
 物理的な報酬を払い終えると、ジヘイは「実はな、旅先で今回の事件と似たようなケースに出会ったことがあるんや」と話し始めます。

「エレメンタルとのコミュニケーションに関する能力を秘めた――まぁ平たく言うたら、召喚魔法の資質があるっちゅうことやな――そういうガキが、本人も無意識のうちに四元素に関するパワーを放出してまうケースがあるんや。報告例が希少やし、現象が目立たん程度やったらそうとは気付かずに終わる場合もある。何せ、こういう力の暴走みたいなもんが起きるのは、せいぜいが10代半ばくらいまでのガキのころだけらしいしな。
 まぁ、そういうことも全部含めて、誰かアタマのええやつが確固たる事実として解明したわけやないから何とも言えんが、ワイも実際にそれらしいケースを見たことが一度だけあるんや。本人の意識が薄れたとき――例えば睡眠時やパニック時なんかがそうやな――、四元素が関連する不可解な現象が起きる。身の周りのものが発火したりビショ濡れになったり、締め切った部屋で風が吹いたり砂や石ころが出現したりする。
 中でも、発火現象は危険度が高いし目立ちやすいから深刻や。一歩間違えれば大惨事なので、騒ぎになりやすい。もっとも騒ぎになったところで、どこぞの馬鹿たれが放火したとか何とかいう始末のつけ方されたりしよるけどな。他の現象は、もっと表沙汰になりにくい。不思議と言えば不思議でも、さほど甚大な被害を及ぼさへんから、イタズラだの何かの間違いだのと軽視されるんや。
 何や、その顔は。さてはやっぱりビンゴかいな。どうや? 今回の事件でも、不審火に隠れて目立たなかったような不可解な現象があったんちゃうけ?」

 ジヘイは、どうすればその現象を治めることができるのかと訊かれても、「あほ、ワイは単なる行商人やど。いや、“単なる”とはちゃうな…めっちゃスゴ腕や。けど、あくまでも旅の商人や。そこまでのことは知るかい。とりあえず、その現象を引き起こしてるガキ見つけ出して、ぶっ殺してもうたら静かになるど。大量に死人が出る前に、そうした方がええんとちゃうけ?」と非道なセリフを真顔で言い放つだけで、それ以上の助力は頼めそうにありません。
 ここで、ジヘイの非人道的な発言をPCが諌めた場合は、彼はフンと鼻を鳴らして立ち去ります。

 この時点で、エレメンタルのパワーを暴走させてしまっている「犯人」の容疑は、ナタリーかダニエルに向けられるでしょう。中でも、ナタリーは言葉を失うなどの症状があるため、神秘的な現象の元凶としてより意識されやすいので、ほとんどのプレイヤーが彼女をマークするはずです。
 この先は、意外性などは要りません。GMは無理にナタリーから容疑を逸らそうなどとせず、素直にテンポ重視でシナリオを進めるようにしてください。

5.暴走するエレメンタル

 PCたちは、魔術師ギルドなどで対処法を探そうとするかもしれません。しかし、ジヘイが言うように、正式な文献としてはまとめられていない事象であるため、有効な情報は得られないでしょう。

 ジヘイから真相めいたことを聞いたのち、フィールズ孤児院で一晩を明かそうとすれば、その夜中に事件が発生します。
 突然、屋外から悲鳴が上がり、駆けつけてみると少年の着衣に火がついて燃え上がっています。夜回りに出ていたダニエルです(仮にすでに夜回りのことがバレていて、ソフィア院長などから止められていたとしても、この晩は居ても立ってもいられなくなって、再び抜け出しています)。火を消し止めたときには、すでに彼は大火傷を負っており、呻くように「突然…炎が…矢のように…」と言ったきり意識を失います。
 その様子を窓から見てしまったナタリーは恐慌状態に陥り、金切り声とともに水のエレメンタルを呼び出してしまいます(これが、彼女がエレメンタルそのものを呼び出した初めての体験となります)。驚いたナタリーは、さらに無意識に炎のエレメンタルをも呼び出します。すっかりパニックになったナタリーは意識を失い、その瞬間さらに2体のエレメンタル(ランダムに決定してください)が現れます。
 この合計4体のエレメンタルは、周辺にいる「活動している生命体」に襲い掛かります。この場にソフィアがいるなら、彼女は子どもたちを避難させることで手一杯なはずです。PCたちだけでエレメンタルと対峙しなければなりません。

戦闘後、ふたたび

 この先の展開は、もっともGMに都合よくシナリオが進んだときのものだと思ってください。実際には、PCたちがうまく立ち回ることで、カルロスやジヘイの出番はなくなってしまうこともありえるでしょう。

 エレメンタルを斃したPCたちが様子を見に戻ると、ソフィアは施療院の一室でダニエルに「キュア・ウーンズ」をかけるなどの処置をしています。手が足りないので、パーティの中に【聖導】や【治療】スキルを持つ者がいる場合は、手伝うように促しましょう。ちなみに、魔法による治療を施せるならばダニエルに傷跡が残ることはほとんどありません。

 一方、部屋で倒れていたナタリーは、意識を失っている間にさらにエレメンタル(属性はランダムに決定)を呼び出しています。
 PCたちは、彼女の部屋から切羽詰まった悲鳴が聞こえてくれば、急いで様子を見に行くことでしょう。彼女の部屋の扉は開け放たれており、ちょうどまさに意識を取り戻したナタリーが、エレメンタルに襲いかかられようとしています。しかし、その両者の間に、一足先にカルロス爺さんが滑り込み、ナタリーをかばっています。少女は恐怖におののき、腰が抜けているようで動けません。
 エレメンタルの呪文はカルロスを貫き、彼は負傷しているようです。しかし、カルロスはエレメンタルと少女の間から退こうとしません。
 と、そのとき。突然ジヘイが部屋の前に現れ、暴れているエレメンタルに大して「コントロール・エレメンタル」を試みます(彼は水のエレメンタルをハーモナイズしていることに注意してください)。たとえ「コントロール・エレメンタル」が失敗に終わったとしても、何度かトライすればそのうち成功するはずです。PCたちに余力がほとんどないのであれば、ジヘイが呪文を成功させるまで彼を守る役目に徹すれば、ここでの戦闘は無事に終えられるでしょう。

 もしうまくコントロールすることに成功すれば、ジヘイは「あんまりワイの前で暴れんなや。嫌な記憶を思い出すやないけ」と呟いて、エレメンタルを精霊界へと送還します。彼が一度だけ似たようなケースを見たことがあると言ったのは、他ならぬ自分自身の若き日のことだったのです。
 PCには知る術がありませんが、ジヘイは自身が暴走させたエレメンタルの力で、両親と姉を亡くしてしまった過去を背負っています。“その現象を引き起こしてるガキ見つけ出して、ぶっ殺してもうたら静かになるど。大量に死人が出る前に、そうした方がええんとちゃうけ?”という非道とも思えるセリフは、この体験が言わせたものだったのです。

少女の決意

 戦闘を終えれば、ジヘイは「小一時間ほど、待っとき」と言い残して、外へと出て行きます。そして、戻ってきたときには、1人のエルフを連れています。
 「ワイは相手によっちゃエゲツナイ商売やるけど、基本は明朗会計や。アンタらの働きに対して払い忘れた駄賃があることを思い出してなぁ」
 そう言って、ジヘイはエルフの「ロップイヤー」を紹介します。彼女は、盗賊ギルド<双頭の白蛇>の幹部にして上級の召喚師です。彼女はナタリーの訓練係を引き受けてくれるといいます。また、たとえ盗賊ギルドで預かるといえども、彼女の教育上よろしくないことがないように十分に配慮もしてくれるそうです。もちろん、あらかじめジヘイがギルドに多額の寄付をしてハナシをつけておいたわけですが、そういうことは伏せておくのがジヘイの美学です。PCたちがそのことを知ることはないか、あったとしてもずっと先のことでしょう。

 さて、ここからはGMの小芝居(苦笑)が続きます。意外と長丁場なので、ときおり進行をストップして、PCたちがカットインしたり茶々を入れられるような「間(ま)」を確保したほうが良いかもしれません。
 ナタリーを傍で守りたいと思うダニエルは、ソフィアに支えられて場に加わり、ロップイヤーがナタリーを預かるという提案に反対します。しかし、そのとき、ささやくような小さな声でナタリーがこう言います。
「わたし、行きます」
 その場にいる誰もが、ナタリーが言葉を話したことに驚きますが、誰よりもナタリー自身が驚いている様子です。
 衝撃から立ち直ったダニエルは、すぐに今度はナタリーの言葉の意味に驚き、「だけど…!」と食い下がります。しかし、すかさずジヘイが「(ナタリーの方を顎でしゃくって)このガキが“ガキ”でなくなるために頑張る、言うてるんや。それをアタマの悪いガキのまんまのボケが邪魔しよったらかなわんがな」と一喝します。
 ナタリーは言います。「わたし、誰も傷つけないで済むように、いろいろ教えてもらいたい。そして、必ず、また院に戻ってきます。そして、ソフィア院長や、みんなにお詫びと恩返しがしたい。もちろんダニー、あなたにもよ」
 この言葉を聞いたダニエルは、しばらく押し黙ったあとで、「…分かった、がんばってこいよな」と答えます。
 それを見届けたカルロスが、ソフィアに治療をうけながら朗らかにダニエルにこう言います。「お前さんもがんばってみたらどうじゃ? いや、がんばらないようにしてみたらどうじゃ、と言った方が正しいかのう」
 ダニエルは少し赤くなって横を向きますが、カルロスは飄々と知らぬふうで、今度はナタリーの方を向いて言います。
「確かに、世の中にゃあ腐りきった男がいくらでもいる。しかし、そういう男ばっかりではないことは、もうお前さんも分かっておるじゃろ?」
「分かります」とナタリー。
「それにしても、初めて聞かせてもらったが、お前さんの声はとてもキレイじゃの。器量も良いし心根も優しい。わしがもう10歳若けりゃ、放っちゃおかんが……ん? “こんなときに何を”とでも言いたそうな顔じゃの。しかしな、言っておくが男なんてもんは頭の中ソレばっかりなんじゃよ。何しろそのために火の中・水の中じゃからのう(笑)」
 ダニエルが炎に包まれていたシーンを思い出したのか、それとも2年前の悲惨な体験を思い出したのか、思わず息を飲むナタリー。しかし、それを無視してカルロスは続けます。
「信じても良い人たちが、ここにはおる。ソフィア院長もそう。(PCたちを指して)この人たちもそう。ダニエルだって、他の子どもたちだってそうじゃ。誰もがお前さんに悲しんで欲しくないと願っとる。もちろんこのわしだって…と、まぁわしの場合は散々悪さばっかりしてきておるから一緒にしちゃマズイんじゃが…とにかくそういうわけじゃから、たまには息抜きにここ戻ってくりゃあ良い。(ロップイヤーの方を向いて)お姉さんも、それくらいは許してもらえるんじゃろ? 何にも寂しいことなんてありゃせんよ。ナタリーも…それからダニエルも」そう言ってカルロスはふたりの頭をクシャクシャとなでます。

 さあ、恥ずかしいGMの小芝居も、そろそろおしまいです。このシナリオのバックにはいろいろと重苦しいプレストーリーが流れていますので、最後は少し肩の力を抜いて、こんなセリフで締めくくってみてはどうでしょう?

カルロス「(ロップイヤーを見て)ところで、あんたも相当に美人じゃのう。今度どうかね、わしとデートでも?」

経験点

 基本となる経験点は、各自5点です。
 上記のシナリオでは、エンディングの主役はカルロス爺さんであり、オイシイところを総取り状態です。しかし、もし彼が担う役割(「ダニエルに素直になるよう促すこと」と「ナタリーにすべての男を嫌わないでと伝えること」)をPCのうちの誰かが担うことができたなら、その者には、それぞれにつきボーナス経験点を1点余分に与えてください。

 冒険者だからって、危険に立ち向かうだけが能というわけではありません。たまには次代を、そして時代を育てるような言葉を吐いても良いんじゃないかと思います。


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