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ファンタジー/リプレイ

魔術師の宝

2007.07.01 記

目次

はじめに
キャラクター紹介

英雄候補、登場!
いざ、宝探しへ
GMの誤算とラーケンの勘違い
開かないなら壊せば良いじゃない
迷走、そして名答
アブノーマル映像(笑)
冒険者たちの夜

はじめに

 このリプレイは、当サイトに掲載しているサンプルシナリオ「魔術師の宝」を遊んだ内容を、リプレイ化したものです。もし、あなたが、当該のシナリオをプレイヤーとして遊ぶ予定があるならば、今はまだ読まない方が良いかもしれません。
 また、「SSS(エスキューブ)」という馴染みのないTRPGシステムを紹介するうえで、サポートツール的な色合いを帯びたものを意識したので、細部については大幅に編集してあることをあらかじめご了承ください。

 なお、SSSは随時ルール改訂を行なっています。そのため、このリプレイの元となるセッションを遊んだ時点とでは、ルールが異なってしまっている可能性があります。

キャラクター紹介(イラスト:BLACK)

ラーケン・デュロイツ

ラーケン・デュロイツ 人間/男性/28歳  187cm/85kg 右利き
総合LV2  IQ4 DX6 ST7 WP4 VT6
衰弱20 昏倒28 死亡40
スキル
言語/共通語7
知識/伝承5、知識/罠5、鑑定5
アクロバット7、ロープワーク7、罠操作7、捜索5、第六感5
接近戦7(特化:剣、回避)
武装
レザーアーマー(4)、バスタードソード(7)
設定
 無闇にプロ意識の高いトレジャーハンター。骨董品を多く扱う商家の生まれ。店に寄せられる貴重な品々を見て育つうちに宝に対する憧れが高まり、ついにはそういうモノを探し求めることを生業とするようになる。
 基本的には善人であるが、目的意識が強く、あまり手段を斟酌するタチではないため誤解されやすい。
 口癖は「ちっ、これだから素人は…」である。

ジョン・ジョリー

ジョン・ジョリー 人間/男性/27歳 175cm/63kg 右利き
総合LV2  IQ7 DX5 ST4 WP5 VT7
衰弱15 昏倒25 死亡39
スキル
言語/共通語10、ルーン文字8
知識/一般8、知識/上流8、鑑定8
描画8、詩文8、捜索8、味覚8、蠱惑8
接近戦6(特化:回避)、武器投げ6(特化:細剣)
精神魔法8(特化:魔力付与)
武装
レザーアーマー(4)、ダガー(1)×5
呪文
ロック、エンチャント・ウェポン、プロテクション、テレキネシス、トランスファー・サウンド、センス・マジック
設定
 一見優男で内面も優男。子どものころは「神童」と呼ばれたが、今は「紙一重」と呼ばれ残念がられている。魔術師ギルドの学院在学中に芸術に目覚め、画家としての成功を志したが、家賃滞納で借家を追い出されて冒険者となる。
 トレジャーハンターをしているジョンジョリーナという名前の姉がいるらしい。
 彼の絵の具は、なぜかいつもビリジアンが切れている。

トリステル

トリステル エルフ/女性/52歳 163cm/39kg 左利き
総合LV2  IQ6 DX6 ST5 WP6 VT3
衰弱13 昏倒25 死亡31
スキル
言語/エルフ語9、言語/共通語7、精霊語7
知識/一般7、知識/伝承7
聞き耳8、第六感7、情報7、歌唱7、信仰/リト7
接近戦7(特化:細剣、回避)
召喚魔法7、聖導7
武装
レザーアーマー(4)、レイピア(4)
設定
 詳細不明。自称「シティ派エルフ」。リト神に仕える初級神官だが、本人は土の精霊との交わりの方に関心が高い様子。才能ある若手として、神殿からの期待は大きいのだが…。
 体型ばかりでなく、その精神性においても掴みどころがない。良い意味でも悪い意味でも、動かざること山の如し。
 パーティ唯一の女性キャラクターとして、GMのセクハラの標的となる恐怖に怯えているとかいないとか。

英雄候補、登場!

(1)キャラクターメイキング

 正月休みも終わり、すっかり真冬らしく冷え込んだ寒空の下。とある公民館の一室に集った4人のエターナルチャンピオン。彼らは、皆がみな、近くのコンビニで仕入れた食糧や飲み物が入ったビニール袋を携えていた。


GM  さて、我らがオリジナルTRPGシステム「SSS(エスキューブ)ファンタジー」の初リプレイになる予定のセッションだ。気合い入れて頼むよ、皆の衆。
プレイヤーA  おうさ。かかってこんかい!
プレイヤーB  うわ、いきなり鬱陶しいテンションやな。
プレイヤーA  キサマらこそ、その半分眠っているような顔は何だっ! そんなことでTRPGができるのかっ!
GM  ひえー、マジでウザいテンションやな、これは(苦笑)。
プレイヤーC  いつもプレイの途中で眠るくせに…(ボソッ)。
プレイヤーA  んんーー? いま何か言ったか、よく聞こえなかったんだが?
プレイヤーC  いえいえ、何も言ってませんよ。
GM  あ、あのー。いつまでプレイヤーのままじゃれ合ってるんでしょうか。さっさとキャラ作りませんかぁ?
プレイヤーB  そうだそうだ、何しろ約3ヵ月ぶりのTRPGだからな。社会人になると、なかなかみんなが一堂に集まる機会はないんだぞ。早くダイス振らせろ(笑)。

 今回のシナリオは、初期作成状態のキャラクターでスタート。各自が念を込めたり奇声を発したりしながら、自身の分身たるPC(プレイヤー・キャラクター)の能力値を決めていく。

GM  ち。みんな、ダイス目そこそこ良いなぁ、つまんない。
プレイヤーC  うわー今、舌打ちしましたよ。このGM(笑)。
プレイヤーA  まぁ確かに良い能力値だわな。いわば英雄候補と言ったところであるよ。
GM  TRPGは、弱っちぃキャラでどうやって生き残るか、そしてキラリと光る個性を見せつけるかが面白いんじゃないか。違うかね、諸君!
プレイヤーB  GMまで妙なテンションになるなよ、怖いから(苦笑)。
プレイヤーA  まぁ確かにそういう楽しみ方もあるが、素直に祝福してくれたまいよ、せっかく良い目が出てるんだからさ。

 不満そうなGMを尻目に、プレイヤーたちは思い思いのスキルを習得し、所持金を決め、英雄譚を成功へと導くための装備品を整えていく。
 ところで、このキャラクターメイキングを待っている時間というのは、GMは大してやることもなくて意外に暇。仕方ないので、シナリオを読み返したり適当に無責任な茶々を入れたりしながら、PCが完成するのを待つ。
 各プレイヤーはというと、データはほとんど決まったものの、なかなか気に入る名前が浮かばないらしい。アタマをフル回転させている様子だが、幸いなことに両手も口も塞がっちゃいない。ならば時間の節約にもなるし時間も時間だし、昼飯を食いながら考えようということに。あらかじめ食糧を買い込んでおくと、こういうときに便利である(笑)。
 しかしまぁ、スキルを選ぶよりも名前を決めるほうがよっぽど時間かかるんだもん、待ちくたびれたのなんのって(苦笑)。

GM  PCが出揃ったようやね。さっそくですが、それぞれ簡単に自己紹介をどうぞ。
ラーケン  おう、では参る。俺の名はラーケン・デュロイツ。人間の男で28歳。生業はトレジャーハンターだ。
GM  (内心の喜びを隠しつつ)ほほう、トレジャーハンターとは、これまたベタな。それにしてもゴツいトレジャーハンターやな(笑)。
ラーケン  まぁな。STを活かしてガチガチ戦士でも良かったんだが、プレイヤーが少ないから各方面のスキルを満遍なくフォローしようかと。冒険に必須の【捜索】や【開錠】がパーティにないんじゃマズかろう。
トリステル  次はわたしが。えーとエルフの女性で、年齢は52歳、名前はトリステル。リト神官にして召喚師でもあります。ちなみに土のエレメンタルとハーモナイズしてます。
GM  ふむ、紅一点だから自動的にヒロイン候補だね。
ジョン  最後はオレだな。えーと、人間の男で歳は27、画家。名前はジョン・ジョリー。ジョジョって呼んでくれ。
GM  (最後の言葉はスルーして)ジョン・ジョリーは「画家」なの?
ジョン  そう、ジョジョは絵を描くのが仕事。一応、精神魔法を習ったんだが、在学中に芸術にかぶれちまった(笑)。他に【詩文】とかも持ってるぞ。
ラーケン  テメェがそんなくだらねぇ設定つけてるから、俺が苦心してるんだよ。言っておくが、俺はIQ4だからな。カギ開けられなかったりしても知らねぇぞ。
GM  こりゃ、ジョン・ジョリーはパーティのお荷物確定かな?

 ジョン・ジョリーはどうしてもジョジョって呼ばせたいらしいが、そうはいくかい。絶対に呼んでやらねーぜ、と心に誓うGMであった(笑)。

(2)白竜亭にプータローが集う

GM  さてさて、一応ざっくりと自己紹介が済んだわけだけど、君たちは経験豊富なTRPGのゲーマーなんだから、ここはひとつ、お互いまだ知り合っていないという設定でよろしく。
プレイヤー一同  何だとぅ(苦笑)。
GM  さぁ、ナチュラルかつスムーズに合流していって、俺様を感嘆させてくれよ。
ジョン  この性悪GMめがっ。
GM  何とでもほざくが良い。さて、始まりの舞台は、ブラックキール島の南半分を占めるマステルルザ王国の都、ルーザッタだ。
トリステル  では、殊更にややこしくしても仕方ないので、わたしはこの町の神殿で研鑽を積んでいる神官ということで。
ラーケン  俺は…と。そうだな、トレジャーハンターとしては、情報が集まりやすい大都市を目指したんだろう。お宝の噂を求めて王都へやってきたが、出身はどこか別の土地だ。
GM  ふむふむ。で、ジョンは…って、何か犬みたいな名前だな(笑)。
ジョン  失礼な。れっきとした人間だぞ。ちなみにどこかに美人の姉がいるんだ。その名も「ジョンジョリーナ・ジョリー」。

 一同爆笑。
 なるほど、ジョジョよりもそっちがネーミングの発想の原点であったか。やっぱり、その姉は遺跡探索とかやってたりするんだろうな(笑)。

GM  …で、姉の話は置いといて。ジョンとルーザッタとの関わりは?
ジョン  うーん、そうだなオレはこの町の住人ってことで。
GM  全然かまわないけど、さすがに持ち家はナシね。借家なら毎月の家賃を設定しよう。それとも、バブリーにホテル住まい?
ジョン  まさか。うーん、決まったヤサがあるとフットワークが鈍りそうだから…そうだなぁ、借家住まいだったんだが、たった今、大家さんから追い出されたところなんだ。ずっと家賃を滞納していた(笑)。
トリステル  貧乏画家なのね(笑)。
ジョン  まぁね、ホントは貴族の肖像画とか書いて稼ぎたいんだがな。仕方がないので、食っていくためにスケベな絵を描いて売ったりもした(笑)。
ラーケン  食うために、ピンクチラシのイラストとか描いてるんだな(笑)。

 どこのマンガ家志望だよ(笑)。

GM  ええい、話を先に進めてくれたまい。
ラーケン  よかろう、ならば俺はとりあえず酒場で情報収集だ。町の人に手頃な店を尋ねて「白竜亭」のカウンターに辿り着いた。
白竜亭の主人ホワイト(GM)  いらっしゃい、兄さん、見かけない顔ですね。
ラーケン  おう、さっき町に着いたばかりさ。なにかでっけぇお宝の話はねぇかな?
ホワイト(GM)  (苦笑いしながら)うーん、これといって知らないね。
ラーケン  ち、でかい町に来れば儲け話がゴロゴロしてると思ったんだがなぁ。仕方ねぇ、エールをあおりながら酒場の人間観察だ。
ジョン  おっと、ではそこには今宵の寝床にも事欠いているオレがいることにしよう。
GM  了解。ラーケンが酒場を見回したところ、ほとんどが連れがいる者たちだ。しかし、君と同じくカウンター席で1人寂しく飲んでいる同じ年頃の男がいるのに気づく。
ラーケン  なんだかずいぶんな優男だな、おい。まぁ良いや。話し相手くらいにはなるだろう。よう、兄ちゃん。一緒に飲もうや。
ジョン  では、ふたりで簡単に自己紹介などをしながら飲んでいよう。「いやー、家賃払わないでいたら、大家に叩き出されてさぁ」(笑)
ホワイト(GM)  もしもし、おふたりさん。今夜の宿がないなら、どうだいウチの二階に部屋が空いてるよ?
ラーケン  いや、何を隠そう、所持金がほとんどないんだ。とてもじゃないが宿は取れねぇ。
ジョン  そうだな、オレは宿代くらいはなくもないが、節約はしておきたい。そういや「神殿を訪ねて掃除だの肉体労働などの奉仕活動に従事すると、雨露しのぐ軒下くらいは借りられる」と聞いたことがあるぜ。
トリステル  ああ、偉大なる創造神の御慈悲を、そんな理由で(泣笑)。
GM  敬虔な信者だとか同情すべき理由があるとかでもしないと、ちょっと労働したくらいで、そこまで助けちゃくれないんじゃない?
ラーケン  まぁモノは試しだ。そんな美味い話があるなら、ダメモトで行ってみようぜ。
トリステル  おお神よ、罪深きこの者たちの軽い「ノリ」を許したまえ(泣笑)。

 なるほど、手っ取り早くトリステルと接触を持とうという腹か。しかし、そうはさせない。このシチュエーションは、シナリオを進める絶好のチャンス。トリステルにゃ悪いが、もうしばらく登場を控えてもらおう。

(3)エロじじぃを救え

GM  ふたりとも飲んで食ったんだから一人10CP程度を支払ってね。さて、酒場を出るとすっかり夜も更けている。暗い夜道を、2人が神殿の方角へと歩いていると…えーと、【聞き耳】でロール値を出してみて。
ラーケン  むむ、パーティ結成前に事件発生かよ(笑)。…ああ、ダメだ。スキルがないうえに、出目も悪い。
ジョン  オレもスキルはないが、目が良かったな。12でどうだ?
GM  それなら聞こえるね。裏路地の方から何か物音がする。ドスンッ、だの、ビシッ、だの。どうも殴り合いのような音だ。
ジョン  「よぅ、ラーケン、こっちだ」と呼び掛けて、音がするほうの路地へと入っていこう。
ラーケン  ついてくぜ。「ん? なんだ、神殿はそっちなのかぁ(笑)」
GM  暗くて細い路地を進んでいくと、人影が3つ。ひとつは這いつくばっている。ひとつはその者を一方的に蹴る殴る。もうひとつは小柄な人影で、ふたりの傍らでじっと立っている。
ラーケン  ほう喧嘩か。しかし、ワンサイド・ゲームはいかん。さらに近づきながら「くぉらぁ! その辺にしとかねえか!」
GM  イカツイ男が怒鳴るのね(笑)。近づいてみると、倒れている老人をチンピラ風の男が蹴っているんだと分かった。傍で腕を組んで立っているのは派手な顔立ちの女だ。
ジョン  うーん、こりゃあ喧嘩じゃなさそうだ。

 男女は、ラーケンの怒声に気づくと、「じじぃ、命拾いしたな。これに懲りたら二度と人の女に手を出すんじゃねーぞ、コラ!」「キモイんだよ、エロじじぃ!」などと罵りながら、足早に立ち去っていく。

ラーケン  爺さん、大丈夫か? と言って肩を貸そう。
老人(GM)  余計なことはしてくれんで良い。こんな稼業でここまで身体がもったんだから有難てぇ話さ。人様に迷惑かけてきたワシには、こういう死に方がお似合いさ。それよりお前さんら、酒、持ってないか。
ジョン  酒って…この爺さん、そんな余裕あるのかよ?
GM  いや、もうボロボロ。慢性的に安酒で毒された身体はもともと健康を害している様子だ。しかもこの大怪我とくれば、もう青息吐息だね。
ジョン  だろ? やめとけって、爺さん。ちょうどオレたち、神殿に行くところだったんだ。運んでやるよ。
老人(GM)  もう3日も呑んでないんじゃ。酒さえ切らしてなきゃ、あんな小便くさい小娘なんぞ相手に仕事をしくじるなんてこともなかったんだが…。

 どうやら、この老人、女の懐から財布を掏ろうとして手元が狂ったようだ。で、スケベジジィと勘違いされて、連れの男にボコられたということらしい。

ラーケン  なんだ、乳でも揉んだのかと思ったら、違ったのか。
ジョン  気の毒なのかどうなのか、微妙なところだな(笑)。
GM  ふと気づくと老人は意識を失ってしまったらしく、グッタリとしている。
ジョン  とにかく神殿へ運ぼう。ラーケン、担いでやってくれ。
GM  この町の住人であるジョンは、このすぐ近くに施療院があることを思い出した。ソフィア・フィールズという40絡みの美しい女性神官が、孤児院を兼ねて運営している。
ジョン  (初めて聞く名だがノってみせて)ああ、はいはい。ソフィアさんね。でも、あの人には何度か絵のモデルをお願いしてるんだが、遠回しに断られてるんだよなぁ(苦笑)。
GM  それは初耳。アドリブでややこしい絡み方してきたな(笑)。
ラーケン  さてはヌードモデルを頼んでるんだろう(笑)。

 ソフィアさんの裸体の話はとりあえず置いておいて、意識のない老人を担いでフィールズ施療院へと急ぐラーケンとジョン。
 もう深夜といってもよい時間帯にも関わらず、応対したソフィア院長は嫌な顔ひとつしない。ただ、今日はすでに重症患者をひとり扱ったので体力が残っていないらしく、土地勘のあるジョンがひとっ走りリト神殿へと応援を頼むことになった。
 そして、癒し手としてやってきたのは…。

トリステル  ああ良かった。もう出番がないかと思った(笑)。

 それはこっちのセリフだよ(笑)。まったく! まるで能動的に合流しようとしないんだから、トリステルってば。

ジョン  ちっ、つるんぺたんのエルフか。しかも人間年齢にして13歳って、全然だめじゃん。
ラーケン  おや、やっぱりジョンは熟女(ソフィア)の方がお好みってか。
ジョン  別にそういうわけでもないけど、ロリはなぁ…絵のモデルとしても食指が動かない。
トリステル  でも、わたし、最年長ですよん♪
ラーケン  エルフがいるときの定番のセリフとはいえ、何か腹立つ(笑)。このパーティでの主導権は俺が握るつもりなんだ、こんな小娘に負けてらんねぇ(笑)。

 まぁ、何はともあれ、これでようやく役者が揃った。
 やたらとガタイの良いトレジャーハンター。魔術師くずれのエロマンガ家、もとい貧乏画家。そして、ガキ扱いされた上に妙に存在感の薄いエルフの神官娘。
 アンバランスでまとまりのないメンツではあるけれど、みんなベテランのTPRGプレイヤーだ。きっと、何とかなる…と思いたい(泣笑)。

いざ、宝探しへ

(1)宝の地図

 施療院に運び込んだ老人は、行き倒れ寸前のアルコール依存症の盗賊で、カルロスと名乗った。
 ソフィア院長によると「怪我についてはもう心配がないでしょう」という診立てだった。しかし、平穏とはいえない生活と過度のアルコールによって、彼の肉体は限界寸前のようだと告げる。

トリステル  余命数ヵ月かぁ。シナリオ上の設定とはいえ、ちょっと酷ですね。
GM  ソフィアさんは「ターミナルケア的にこの施療院で預かっても良い」と言ってくれているよ。もちろん簡単な雑用などはやってもらうけど、毎晩2杯までならエール酒も飲ませてくれるらしい。
ジョン  確かに気の毒だが、アウトローな稼業の末路としてはマシなほうかもしれないな。
GM  カルロス本人もそう考えたようだよ。翌日の朝食後に、カルロスがラーケンを呼ぶね。「あんた、トレジャーハンターをやってるって言ってたのう?」
トリステル  あれ? 時間が進むなら、わたしはもう用なしですよね?

 待たんかい。
 ここで帰しちゃったら、君はまた表舞台に引きずり出すのが大変だろうが(笑)。

GM  トリステルについては、夜中に何かあった場合に備えて残って欲しいと言われた。ソフィアさんは昼間に呪文を山ほど使ったので、翌日の施療に響かないように(疲労ダメージを回復するために)安眠させてもらうよ。
ジョン  オレとラーケンは、乞われなくても泊まりそうだしな(笑)。
GM  ソフィアさんが「おふたりも、今夜はもう遅いしお泊まりください」と言ってくれたんだろう。
ラーケン  別にかまわんよ、むしろ好都合だ。とにかく朝になってカルロスが呼んでるってことなら、俺はカルロスんとこへ行くぜ。
GM  おっけー。では、カルロスはラーケンと二人きりになれる場所へ行くと、懐からボロボロの羊皮紙を取り出す。
ラーケン  ん? カルロス爺さん、何だい、そりゃ?
カルロス(GM)  (地図をプリントアウトしたものを見せながら)こりゃあな、宝の地図じゃ。昔、博打で負かした相手から奪った品でな。
トリステル  お、小道具が出てきましたよ(笑)。
ラーケン  おお、ホントだ(笑)。どれどれ…。こりゃあ、トレジャーハンターとしちゃ食いついとかんとな。
GM  職業がトレジャーハンターと聞いたときは、今日のシナリオを知ってるのかと思ったよ(笑)。プレイヤーがいかに胡散臭いと思っても、キャラクターとしては興味を持ってね。
ラーケン  任せろ。「爺さん、面白そうじゃねーか!」と言って身を乗り出そう。
GM  カルロスいわく、元の持ち主は「沈んだ海賊船の中から見つかったものだ」と言っていたらしい。もっとも、カルロス自身は大して信じてない。単に、よくできているし格好良いので大事にしていたんだと。
ラーケン  (地図を指し示しながら)ここに「宝」だの「鍵」だのと書いてあるのは何だろう。
GM  おっと。それは、ラーケンには読めないよ。そこに書かれている文字のようなものが何なのか、君は知らない。もちろんカルロスも知らない。「何となくホンモノっぽくて格好良いじゃろう?」などと言ってるね。
ラーケン  なるほど、学のあるヤツに後で見てもらうとするか。この右下にある骸骨の絵は何だろうな?
GM  さぁね。ちなみに、地図の裏にも何やら文章らしき文字がある。たぶん同じ言語だ。
ラーケン  つまり、それも俺には読めねぇってことか。ちょっと期待して良いかもな、こりゃ。
カルロス(GM)  あんたがたに礼がしたいが、本当に何もない。そこで、コレを受け取ってほしいんじゃ。こんなものしかなくて悪いが、年寄りを喜ばせると思って、頼む。

 カルロスの願いをありがたく聞き入れ、宝の地図を譲り受けることにしたラーケン。さっそくジョンとトリステルを集め、例の文字が読めないかどうか確認させることに。

GM  昔とった杵柄で、ジョンには読めるね。なんと、ルーン文字だ。
トリステル  ちょっと本物っぽくなってきましたね。ジョンさん、何て書いてあるんですか?
ジョン  オレに訊くなよ(笑)。…で、何て書いてるんだ、GM?
GM  表面にはルーン文字で「宝」「鍵」という文字が。
ジョン  いやいや。裏面だよ、裏面(笑)。
GM  「我ハンタスの宝は我が島の森。樹にあらざる樹の下に隠せり。正しき目を持つ者、亡骸(なきがら)は安らかに眠らせたまえ」と書いてるね。
ラーケン  おい、こいつはマジでビンゴかもしれねぇぞ。

 シビアに金に困っているジョンとラーケンは、少しは宝の地図に期待を寄せ始めた様子。
 しかし、問題はトリステルである。神殿で寝食には困らない彼女が、胡散臭い宝の地図一枚で動き出すというのは、いまいち動機付けとしては弱いだろう。
 案の定、ジョンとラーケンが積極的に「ハンタス」「島」などの手掛かりを元に情報を集め始めたのに対して、トリステルのアクションは乏しい(苦笑)。

(2)動け、エルフ娘

GM  どうやら、ハンタスという名の強力な魔術師が200年以上前にいたらしい。そして彼の名が冠された島が、このマステルルザ島の西側の近海にあるらしい。
ジョン  すまん、魔術師ギルドの図書館で調べて分かったのは、それだけだ。
トリステル  なんの。わたしなんて「ハンタス島」についての知識がないか探っただけで疲労したくらいですから、誰も責められませんよ。

 彼女は、島についての知識を判定するロールで、このパーティ初のピンゾロを献上したのである(笑)。
 このように、SSSでは、判定ロールでピンゾロを出してしまうと疲労ダメージを1点被る。見込みのない判定ロールでもとりあえず6ゾロ狙いでやってみる、なんてことは避けた方が良いかもしれない。

ラーケン  うーむ。そのハンタス島がある近海とやらは、ルルザ川の河口付近なんだよな、GM?
GM  そうらしい。ただ、それ以上の詳しいことは分からなかった。
ラーケン  こりゃあ、うじうじ考えるよりも、現地に行ってみたほうが早いかもしれんな。
GM  マステルルザ島西岸へは、ここルーザッタから徒歩で4日、急げば3日といったところだね。
ジョン  ということは、保存食が一日3食×4日で12食くらいはあった方が良いな。いや、往復ならその倍か。
ラーケン  うを! 保存食、意外と高ぇじゃねーか! 全然足りないぜ、所持金。
ジョン  げ、ラーケンの所持金、何だそれ。60CPしかないじゃん(笑)。
ラーケン  精密キットとかが高くついたんだよ。しかしこりゃ参った。宝探しをやろうにも、そもそも先立つ路銀がない(笑)。

 おいおい、キャラメイクの際には少し金を余しておくのがセオリーだろ! 「路銀がない」って、じゃあ、どうやって旅するつもりだったんだ、このトレジャーハンターは?

GM  誰か【知識/野外生活】を持ってないの? 少しは食糧を調達しつつ旅ができるよ。
ジョン  ない。
ラーケン  ねぇな。
トリステル  ありません。

 マジかよ(苦笑)。このままでは、本当に旅立てないじゃないか。
 いや、待てよ。イマイチ乗り気でないトリステルをシナリオに巻き込みつつ、パーティの路銀不足を解消する一石二鳥の手を思いついたぞ。
 ちと手助けしすぎのような気もするが、まぁ良いだろう。ホンの少しだけシナリオを変更して…と。

GM  あー、では、トリステル。
トリステル  はい、なんでしょう?
GM  君は神殿での上役から呼びつけられるよ。
トリステル  なんだろ、わたし、怒られるようなこと、したかな?
上役の神官(GM)  トリステル、貴女もそろそろ外の世界を見てきてはいかがですか?
トリステル  …と、言いますと?
GM  君に調べて欲しいことがあるんだと。要はちょっとした旅に出てくれってことだね。
ラーケン  何しろ、トリステルは外の世界(ハンタス島)のことを考えただけで疲れちまうようなヤツだからな(笑)。
ジョン  自分だって何も知らなかったくせに偉そうだな、おい(苦笑)。
ラーケン  ちっ、これだから素人は。俺は、判定ロール以外の部分でGMから数多の情報を引き出しているんだぜ?
トリステル  ホントかしらん(笑)。

 上役の神官によると、マステルルザ西岸の小さな漁村から「燃えない樹」に関する情報が魔術師ギルドに寄せられたという。
 村の沖合いにある無人島の森が山火事(?)で全焼したのだが、中に一本だけ焦げ跡ひとつ付いていない樹があったため、村では「観光の目玉にしよう」だの「聖なる樹じゃないか」だのと大騒ぎになっているらしい。

トリステル  でも、村人たちが「聖なる樹」だと騒いでるくらいで、何も神殿が動かなくても。
GM  (う…)そ、それはアレだよ。慢性的な人手不足に悩む魔術師ギルドが神殿を頼ってきたんだろう。
ジョン  何となく「たらい回し」っぽい(笑)。
GM  まぁね。もちろん神殿としても「厄介事を押し付ける気だな」と分かっちゃいたけど、期待の若手であるトリステルに任せてみてはどうかという話になったんだ。
トリステル  うーん、じゃあ仕方ないから引き受けましょうか。

 「仕方ない」って言うな(笑)。
 ったく、このエルフ娘ときたら、ホントに動かざること山の如しなんだから。

(3)ヒース村到着

 2〜3人程度なら護衛を雇って良い、と上役の神官は言う。報酬は1人5GP、危険が待ち受けていた場合には(その判断はトリステルに一任されることになった)危険手当でプラス5GP。
 往復で10日の仕事と見積もれば安すぎる感は否めないが、本来は「ハンタスの宝」以外の収入がないはずのシナリオなだけに、アドリブで多額の報酬を与えるのは避けたかった。その代わりと言ってはアレだけど、道中の食糧は1人8日分までなら支給してくれることにしてみた。
 さあ、山よ、動け!(笑)

GM  ちなみに、トリステルには金銭報酬は出ないよ、「身内」だから。食糧は支給されるけどね。
トリステル  ま、そうでしょうね。とりあえず、護衛を雇いに行きましょう。

 当然、トリステルはラーケンやジョンに話を持ちかける。
 この辺り、ややGMがご都合主義に走りすぎた感は否めないのだが、今回のプレイヤーたちはツボを心得ているので、無闇に冗長なセッションにならないように素直に動いてくれる。

ラーケン  渡りに舟たぁ、このことだぜ!
ジョン  どうせなら、上には3人雇ったと報告しておいて、3人分の報酬を貰うというのは…。
トリステル  (途中で遮って)さすがにそれは拒否しますよ。神殿の運営費はおそらく公費や貴族からの寄進がほとんどを担ってるとは思うけど、貧しい民が捻出してくれた寄進だって含まれてるんだもん。
ジョン  う、至極正論。
ラーケン  良いじゃねぇか、別に神殿を騙すようなセコいことしなくても。ハンタスの宝さえ手に入れば、金貨数枚の報酬なんざ誤差の範囲だ。とっとと出発しちまおうぜ。
ジョン  宝の存在を微塵も疑ってないな、ラーケンよ(苦笑)。

 実はGM、ここでポカミスを犯している。
 神殿からの依頼という形を取った時点で、宝が見つかったとしても無条件にパーティだけで山分けというわけにはいかないはず。これは別のこじれ方をして魔術師ギルド経由の仕事という形になった場合でも同様。
 しかし、言い訳にもならないことを言うようだけれど、この程度のミスならTRPGを楽しむうえでは大きな問題にはならない。参加者みんながセッションそのものに費やした時間に満足できていれば、それはそれでアリだと思うし、ロジックやルールにこだわりすぎてつまらないセッションになってしまうよりはずっとマシだとすら思う。
 ミスを犯した張本人がこんなことを言っても、格好悪いだけなんだけどね(苦笑)。

GM  ヒースの村までは急げば3日、ゆっくりなら4日。ちなみに、このミッションはトリステルへの試練という意味合いも兼ねているから、当然ながら馬や乗り物は借りられないよ。
ジョン  食糧のことを考えると、急いだ方が良いんじゃないか。
トリステル  VTが小さいわたしとしては辛いところですねぇ。
GM  ルール的には特にVTと旅路の関係についての決まりはないわけだけど、「ロールプレイ」という視点からはトリステルの今の意見はもっともやね。
ラーケン  だが、片道4日もかけてたんじゃ、支給される食糧だとギリギリになっちまうぜ? 消耗品は余裕をもって計画しねぇとな、素人じゃねーんだから。
ジョン  自分の所持金の欄を見ながら、もう一度そっくりそのまま、今のセリフを言ってみろ(笑)。
ラーケン  ジョン君、あんまり可愛くないこと言ってると、戦闘のときに最前線に立たせちゃうぞ(笑)。
ジョン  うを、それだけは勘弁(笑)。
トリステル  でも確かに、旅程を短くして食糧の消耗を減らせば、神殿の負担も少しは減るよね…よし、3日ペースで進むことにしましょう。
GM  おっけー。では、途中の道のりはすっ飛ばしてしまおう。君たちは3日後に小さな漁村ヒースへと到着した。
ジョン  早っ(笑)。

 だって、こんなところで時間をかけても仕方ないもん。

トリステル  さてさて、村に着いたのは良いですが、これからどうしましょ?
ラーケン  ち、これだから素人は。こういうときは上の人間を探すんだ。その辺の村人捕まえて、村長の居場所を訊いてみよう。
GM  村人は「ああ、魔術師ギルドに使いを遣ったと聞きましたが、もう調査に来てくださったのですね」と言って、村長宅を教えてくれる。
トリステル  正確には魔術師ギルドからたらい回しにされて、リト神殿からやってきたわけですが(苦笑)。

 村長と面会した一行は、舟の手配までやってもらえることになった。シナリオでは有料で村民を雇わなきゃならなかったはずが、GMが後先を考えずに「村からお上への陳情」という形にしてしまったため、気付けばどんどん至れり尽くせりな状態になってしまった。
 ちょっと甘すぎたかなぁ(苦笑)。

GMの誤算とラーケンの勘違い

(1)燃えない樹

ラーケン  では、島に上がる前に情報収集だ!

 張り切っているラーケンには悪いんだけど、村ではこれといった情報は入らない。何人かの村人が「燃えない樹」の傍までは行ったものの、さすがに全焼した森の中で一本だけ無傷というのは尋常ではないというので、不気味がって詳しくは調べていないという。
 ただ、小さな島なので、ぽつんと焼け野原に立っている一本の樹を見つけられないということはないらしい。

村長(GM)  日没までもうすぐですし、今日のところは拙宅にてお休みください。翌朝、村の者の漁船で島までお連れいたします。
トリステル  何から何まで、すみません。

 ホントに何から何まで図々しいよ、君たち(苦笑)。

GM  翌朝、君たちを乗せた漁船は村の沖に浮かぶ小さな島へと接岸する。少し先には焼け野原が見えていて、視覚による影響か、焼け落ちてもう随分と経っているはずなのに、まだ焦げ臭いような気がする。地形に多少の起伏もあるようで、ここからは燃え残った樹は見えないね。
ジョン  よし、大体の方角を聞いてあるだろうから、そっちへ向かって進んでいこう。
ラーケン  待て待て待て、素人諸君。その前に、迎えの舟の算段を立てておかねぇと。
ジョン  そういやそうだな。うーん、夕方にもう一度この岸に着けてもらうってのはどうだろう?
ラーケン  それだと、宝探しが長引いちまったときに間に合わんかもしれねぇな。
トリステル  では明日の朝にももう一度来てもらうというのは?
ラーケン  だな。それと悪りぃが、念のため明後日の朝にも着けてもらおう。この3回の迎えで俺たちが戻らないようなら、もう一度、神殿なり魔術師ギルドなりに使いを遣ってくれ。
ジョン  それが良い。すんごいヤバイことになってるか、オレたちがあっさり全滅したかのどちらかだからな(笑)。

 船を渡してくれた村人と別れて、3人は島の中心へと向かった。目指す「樹」はすぐに見つかったが、やはりちょっと怪しい雰囲気が漂っているようだ。
 というのも、この樹を目にする直前、GMが冒険者たちにWP抵抗ロールを命じたのだ。これは、幻覚に抵抗できたかどうかの判定ロールなのだが、何が何やら分からぬうちにダイスを振った3人は、全員が抵抗に失敗してしまう(もっとも、これは6ゾロでも出ない限り抵抗できないように高い難易度に設定されていた)。
 実は、この樹は高LVの呪文によって作られた幻覚で、視覚はもちろん、触れば偽りの触覚も感じさせるほどの代物なのだ。

GM  えーと、君たちの目の前に一本の樹が見えてきた。確かに焼け野原の真ん中で、ぽつんと一本だけ。
トリステル  今の抵抗ロールは何だったんでしょう?
ラーケン  さぁな。とにかく俺たちにできることは、辺りに注意を払いながら近づくことだけだろう。
GM  さらに謎の樹に近づいていくんだね? では、今度は「総合LV+IQ」をベースにロール値を出してみて。

 こういう判定ロールは、本来はGMがこっそりやるべきもの。でなければ、プレイヤーは、判定ロールを求められたことで「何かあるのかな?」と勘付いてしまう。
 しかし、ここではGMはあえて直接判定ロールをさせた。この樹がただの樹ではないことは最初から分かっていることであり、今さら隠すほどのことではない。むしろ、これまでほとんどダイスを転がす場面がなかったので、プレイヤーを退屈させないためにも直接振ってもらったほうが良いだろうと考えたのだ。
 いつもセオリーどおりで良いかというと、必ずしもそうとは限らない。こういう匙加減やバランスを取る作業も、GMの仕事である。

ジョン  うーんと、16だな。
トリステル  あらら、目が悪い。11です。
ラーケン  10。まぁ目も悪かったが、俺は頭も悪いからな(笑)。
GM  トリステルとラーケンは、何て目を振るんだい(苦笑)。とりあえず、ジョンは樹の枝葉がまったく風に吹かれていないことに気づく。それから、影の位置も今の時間帯から考えると妙な感じだ。
ジョン  ふむ、幻術か? とにかく二人にもそのことを教えておこう。
ラーケン  なるほど、まさに「樹にあらざる樹」じゃねぇか。俺は、地図の裏書きに従って、素直に樹の下あたりを掘り返してみよう。
ジョン  そうだな。これまでほぼ地図に書かれた文言と一致した状況が続いてるんだし、安直だが十分ありえる。オレも一緒に掘ろう。
GM  ふたりが掘り始めてまもなく、堅い岩盤のような感触に当たるね。
ジョン  来た! さらに掘ってみよう。
GM  うん。掘るというか、岩盤が何物なのか調べるために周辺の土をどけていくと、石でできた落とし戸のようなものが現れた。
ラーケン  うほっ! よし、パーティ随一のパワーを誇る俺が、一丁持ち上げてみようじゃねぇか。
GM  重いね。君ひとりでは上がりそうにない。
ラーケン  くそっ、ジョンも手伝ってくれ。
ジョン  肉体労働はオレのもっとも不得手とするところだが、手伝おう(笑)。
GM  (ラーケンがST7で、ジョンがST4…ということは1点足りないじゃないか)うーん、もう少しで持ち上がりそうなんだけどねぇ。
ラーケン  こら、エルフ娘。おまえも手伝わねぇか、さっきから掘り返すのもボーッと見てただろ(笑)。
ジョン  そうだよ、オレよりSTが高いくせに(笑)。
トリステル  (嫌そうに)うーん、じゃあ仕方がないので手伝います。

 どこまでも動かざること山の如し。おそるべし、トリステル(苦笑)。

(2)地下へ

 三人がかりで、ようやく石の落とし戸が開く。ぶっちゃけた話、「ラーケン&ジョン」ではなく「ラーケン&トリステル」なら、ふたりでも持ち上げられたんだけどね。

GM  落とし戸の下では、1m四方くらいの真っ暗な四角い穴が垂直に地下へと延びている。ちゃんと梯子が付いているんだけど、穴そのものがどれくらいの深さかは分からないね。
ラーケン  10mのロープを持ってるから、この先にランタンを結んで降ろしてみよう。
GM  えーと、ではちょうどもう少しでロープが足りなくなるかという辺りで、ランタンが床に着いたようだ。
ジョン  降ろしている途中、ランタンの光が照らしている範囲に何が見えていた?
GM  梯子はちゃんと下まで続いていた。それ以外には、特にこれといって何もないように見えたね。
ラーケン  よし、じゃあ行くか! 俺が最初に降りよう。
トリステル  では、続いてわたしが。
ジョン  じゃあ、オレが殿(しんがり)だな。

 ここで、GMはプレイヤーに内緒で、【第六感】による目標ロールを行なう。最初に梯子を降り始めたラーケンは、スキルLVが低いせいもあってあえなく失敗。しかし、続いて梯子を降りようとしたトリステルが、見事に成功。
 こういうときって、トリステルの運が良いのか、それともGMのダイス運が良いのか、微妙なところである(苦笑)。

GM  ラーケンがまず梯子をスルスルと降りていく。続いてトリステルが降りようとしたそのとき…
トリステル  ん? どうかしましたか?
GM  トリステルはうなじの毛が逆立つような嫌な予感を感じた。
トリステル  ぞくぞくっ!
ジョン  こりゃ、梯子が途中で崩れるな(笑)。
ラーケン  おーい、警告してくれー。でないと、俺、どんどん梯子を降りてっちまうぞぉ(泣笑)。

 ちなみに、先刻の謎の樹の場合と違って、このときはプレイヤーたちがまったく梯子に警戒心を示していないので、こうして内緒で判定ロールを行なうことは大いに意味がある。
 また、成功するための難易度は16と、かなり高めに設定してあった。【第六感】というスキルは、プレイヤーが無策であっても罠などの危険を察知できてしまう可能性があるスキルだけに、あまり便利すぎては芳しくない。判定ロールの難易度は、高めに設定しておくべきだろう。

 とにかく、トリステルの嫌な予感を信じた冒険者たちは、念のために梯子を降りるのを中止。いったん地上に全員が戻ることにした。そして、あらためてじっくり梯子を調べてみたところ、ひどく腐食が進んでいることにジョンが気づいた。
 どうしたものかと思案した3人は、最終的に以下のような方法をとることに決めた。

(1)まずジョンに命綱をつけて、ラーケンとトリステルが地上で支えておき、ジョンは一応梯子を使って降りていく。もし途中で崩れたら命綱で降ろす。
(2)次に、トリステルを降ろす。彼女は軽いので、ラーケンが1人地上に残って支える。他はジョンのときと同じ。
(3)最後にロープをくさびで地上に固定しておき、ラーケンがロープを使いながら自力で降りる。

ラーケン  これならジョンとトリステルは安全に降りられる。俺は【登攀】がないので落下するかもしれんが、【アクロバット】でダメージを軽減できれば死ぬことはねぇだろう。
GM  おっけー。では、ジョンが梯子を降りていくと、半分よりやや手前まで降りた辺りで、梯子がガラガラと崩れ落ちてしまう。
ジョン  ふ、やはり読みどおりだったか…などと渋くキメながら、ロープでぷらーん、ぷらーん(笑)。
ラーケン  かなり格好悪いぞ(笑)。

 このあとは作戦通り。ジョン、トリステルと続けてロープで降ろし、そして最後にロープをつかみながらラーケンが降りていく。
 さいわいなことに、ラーケンも落下することなく無事に下まで降りることができた。

(3)重大事実、発覚

GM  降りてきた場所は、袋小路になってる。壁も床も天井も石造り。海上の小島の地下だけあって、かなり湿気っぽくて、嫌な感じに磯の匂いが漂ってる。
ジョン  通路が延びている方は、どんな感じなんだろう?
GM  ランタンの明かりが届かない先は真っ暗で、今の状態では何も分らないね。さて、どうする?
ラーケン  どうするもこうするも、警戒しながら進むしかねぇだろう。
トリステル  そうですね。隊列はどうしましょ? それとランタンは誰が持ちます?
GM  えーとね、この通路は天地左右とも3mくらい。並んで歩くのは3人でも大丈夫だけど、戦闘となれば2人でも少々窮屈かもしれない。
ジョン  とりあえず、ランタンは俺が持つよ。隊列は「一列縦隊」で良いんじゃないか?
ラーケン  そうだな。先頭は俺、真ん中がトリステル、後ろにジョンという並びが無難だと思うが。
ジョン  おいおい、オレが殿(しんがり)かよ!
トリステル  回復役のわたしがダウンしちゃマズイですから、真ん中で守ってくださいな♪
ラーケン  そういうこった。それに、後ろで神官に控えておいてほしいしな。
ジョン  うーん、戦闘は苦手だが、仕方ないか。

 「キュア・ウーンズ」は、呪文をかける相手に接触してなくちゃならない。そのため、前線で戦う者の近くに聖導の使い手を置くのは、有効なフォーメーションのひとつである。

 さて、どうにか隊列も決まり、いよいよ3人は地下の探索を開始した。
 GMの思惑とは裏腹に、プレイヤーたちは扉の類にはまったく手も触れず、通路と扉の位置関係だけを調べていく。まずは「降りてきた地点が、地図上のどこなのか」を冷静に見極めるつもりらしい。
 せっかく地図があるというのに、ご丁寧に自分たちでマッピングまでしている。

トリステル  どうやら、わたしたちが降りてきたのは、この下側の通路じゃなくて右側の通路っぽいですね。
ジョン  そうであると仮定すると、「宝」の部屋ってのはこの辺か?
トリステル  ですね。十字路からそっちへ抜ける通路は土砂で塞がってたので通れないけど、こっちの角にある部屋を通り抜ければ行けるかもしれませんよ。
ジョン  しかし、その部屋に向かう通路が傾斜していたことと、その突き当たりの壁にあった四角い溝が気になるな。
ラーケン  まぁ、いずれにせよ鍵は必要になるだろうから、まずは「鍵」の部屋に行ってみようぜ!

 このベテランプレイヤーどもを相手に、この程度の子ども騙しは通用しないか(苦笑)。宝の地図のトリックが不発とあっては、このシナリオの主軸のひとつが失われたも同然。
 まぁ、残念な誤算ではあるけれど、セッションは続けなくちゃならない。

GM  では、その部屋の扉の前までやってきた。
ラーケン  よし、まずは罠が仕掛けられていないか、調べてみよう。【捜索】のスキルLVは…と。
ジョン  待った! 【捜索】なら、オレも持ってるぞ。しかもラーケンよりもLVが高い。
ラーケン  ちっ、これだから素人は。罠の有無を知るには【捜索】だけじゃ駄目なんだぜ。【知識/罠】が制限スキルになるんだ。

 その通り。例えば、【捜索】が7LVであっても、【知識/罠】が6LVしかなければ、判定ロールの際のベースは6になる。
 もしジョンが罠の有無を調べようとするなら、例え【捜索】のスキルLVがいくら高かろうと、【知識/罠】を持っていないので「IQ÷2(端数切捨て)」がベースになってしまうのである。

ラーケン  というわけだから、ここは俺に任せてもらおう。ロール値は13だ。
GM  うーん、罠はないように思う。
ラーケン  よし、ゆっくりと開けてみよう。
GM  開かないね。どうやら鍵がかかっているようだ。
ラーケン  またまた俺の出番だな。さっそく【開錠】を試み…(といって凍りつく)
トリステル  ラーケンさん、どうかしました?
ラーケン  おかしいな。ねぇぞ。
ラーケン以外の全員  何が?
ラーケン  俺、【開錠】スキル、持ってねぇや…。
ラーケン以外の全員  (引きつった顔で)………嘘やろ?
ラーケン  いや、マジだ。おっかしいなぁ、確かに取っといたはずなんだが。
ジョン  さんざんオレに「【開錠】とか取ってあるから大変だ」みたいなことを言ってたくせに!(笑)
ラーケン  いやいや、俺が一番驚いてるよ。こんな大胆な勘違いってあるんだな。

 しみじみ言ってんじゃないよ! 鍵を開けるすべもなく、ダンジョンアタックなんて前代未聞だぞ(苦笑)。
 一体どうするんだ、これから?!

開かないなら壊せば良いじゃない

(1)エンチャントくさび

ジョン  とりあえず、扉をぶっ壊して入るってのはどうだ?
GM  道具はどうするの? 武器を使うなら、破損する可能性があると思うよ。
ラーケン  くさびがあと5本残ってる。こいつを使おう。
トリステル  ドアノブとか蝶番の辺りを集中的に狙えば、何とか開けられるような気がしますね。
ジョン  俺がくさびに「エンチャント・ウェポン」をかけるという手もある(笑)。
トリステル  「エンチャントくさび」ですか(笑)。
ラーケン  この際だ、できそうなことはすべてやろうじゃねぇか。
GM  (マジかよ、コイツら…)

 本来は、こんなことを認めていたんじゃゲームにならない。【開錠】というスキルの存在意義すら揺らぎかねないし。
 しかし、ここで一度引き返して【開錠】を使えるNPCを探してくるなんていうのは、時間がもったいないし、セッション全体のリズムも悪くする。そう考えたGMは、百歩…いや千歩譲って、プレイヤーたちのアイデアを認めることにした。

GM  じゃあ、この扉を開けられる状態にまで破壊するのに、1D3本のくさびを使い潰してしまうことにしよう。
ラーケン  俺が振っても構わんか?
トリステル  ラーケンさんのくさびですから、お任せします。
ラーケン  よし、いくぞ。(コロコロ…)うっしゃあ、1本だけで済んだぞ! なんぼのもんじゃいっ!
ジョン  ナイス! やるじゃないか、ラーケン!
トリステル  節約になりましたね♪

 ったく、こいつらときたら、一体どこで盛り上がってんだか(苦笑)。

GM  一応、ジョンは「エンチャント・ウェポン」のぶん、きちんと疲労しとくように。
ジョン  げ、シャレじゃなかったのか!(笑)
GM  もちろん、そこまでやるということで君たちのアイデアを認めたんだから。
ラーケン  とにかく、どうにか扉を壊せたんだ。注意しながら中を覗いてみよう。
トリステル  あれだけガンガン扉にくさびを打ちつけてたんだから、今さらコソコソしても仕方ないような…(苦笑)。
ラーケン  まぁな。しかし逆説的には、敵がいたら確実に迎撃態勢を整えてるわけだろ?
GM  中を覗くと、かなり広めの部屋だね。さいわい、敵の姿は見当たらない。天井に魔法的な光源があるらしく、それなりに明るい。中央には台座があって、子どもくらいの大きさの彫像が立っている。
ジョン  これ、動くぞ(笑)。
GM  そして、彫像の首には、鈍い光彩を放つ大ぶりの鍵のようなものが下げられているのが見える。
ジョン  絶対、これ、動くぞ(笑)。

 ええい、だまらっしゃい(苦笑)。

ラーケン  だが、この鍵は後で必要になるに違いねぇからな。俺は、鍵を取るために少しずつ近づいてみるぜ。
トリステル  いざというときには援護できるように、隊列を崩さずについて行きましょう。
GM  おっけー。では、首に下げられた鍵を奪うべく、少しずつ彫像に近寄っていく君たち。そして、ラーケンが彫像まであと2mという所まで進んだとき…。
ジョン  やっぱり動くんだな?(笑)
GM  ええ、ええ、そうですよ。ジョン様のお察しのとおりでげす(苦笑)。
トリステル  そんな卑屈にならなくても(笑)。
GM  見え見えの展開で申し訳ないが、とにかく、彫像は驚くほど滑らかに台座から降り立つ。そして、君たちへと襲いかかる!

 さぁ、初戦闘だ!

(2)ゴーレム粉砕

 ジョンとラーケンは、この動く彫像が「Sサイズのアイアン・ゴーレム」であることを看破した。小型とはいえ、アイアン・ゴーレムはPS(パワースコア)や装甲が高いので侮れない。運が悪ければ大ダメージを被ることになるだろう。

GM  さて、みんな。IQと移動力を教えておくれ。

 SSSの戦闘では、IQの低い者から順番にそのラウンドの行動を宣言し、移動力が高い者から順番に行動していく。そのため、GMは、まず最初に戦闘に参加する者のIQと移動力をチェックしなくてはならない。
 例えば、この戦闘での行動宣言の順番は「ゴーレム(IQ0) → ラーケン(IQ4) → トリステル(IQ6) → ジョン(IQ7)」となる。一方、行動順のほうは「ラーケン(移動力10) → トリステル(移動力10) → ジョン(移動力9) → ゴーレム(移動力9)」となった。ラーケンとトリステル、そしてジョンとゴーレムはそれぞれ移動力が同じだが、こういう場合は1D6で順番を決めるのだ。
 ちなみに、こうして最初に決めた行動宣言と行動の順番は、原則としてその戦闘の間は変化しない。でないと、処理が煩雑になっちゃうからね。

 さて、第1ラウンド。
 行動宣言は、ゴーレム:ラーケンを攻撃、ラーケン:ゴーレムを攻撃、トリステル:土のエレメンタル召喚、ジョン:ラーケンに「プロテクション」。
 まずは、ラーケンの攻撃が、動きの鈍いアイアン・ゴーレムにあっさり命中。ダイス目が走り、いきなりの貫通クリティカル…と思いきやアイアン・ゴーレムは相手の貫通C値を+2してしまう。つまり、バスタードソード(貫通C値11)では絶対に貫通できない。それでも、脅威の16発のダメージを叩き出したので、アイアン・ゴーレム相手に7発もの負傷ダメージを与えた。

ラーケン  見たか、ST7の破壊力ゥ!

 2番手のトリステルは「サモン・エレメンタル」。ハーモナイズしている甲斐あって、土のエレメンタルが「友好的」な状態で現れる。
 さらに、ジョンの「プロテクション」がラーケンを包みこむ。これで、万が一アイアン・ゴーレムの大振りな攻撃が当たってもダメージを軽減できる。
 そしてようやく手番が回ってきたGM(アイアン・ゴーレム)が念を込めてラーケンを攻撃するも、あえなく失敗。

GM  ええい、くそ! 当たりさえすればぁぁっ!
トリステル  うわぁ、何かこのGM、怖いよぉ〜(苦笑)。

 第2ラウンド。
 まずは、新しく戦闘に参加することになった土のエレメンタルのIQと移動力を確認。下級エレメンタルのIQは2だから、行動宣言はゴーレムの次ということで問題ない。しかし、移動力は9(ジョンやゴーレムと同じ)なので、1D6で決める必要がある。
 こういうときのために、IQや移動力が同値だったときに各自が振った1D6の値を、GMはメモしておいた方が良いだろう。この戦闘ではGMがそれを怠っていたため(苦笑)、5・6が出たらジョンの前、3・4が出たらゴーレムの前、1・2が出たら最後ということにした。

トリステル  あちゃ、2だ。てことは、エレメンタルの行動順は一番最後ですね。しょぼーん。

 ラーケンは出目が悪く、ゴーレムへの攻撃を外す。
 続くトリステルは、万が一に備えて、ラーケンに対して「キュア・ウーンズ」の呪文を唱え始める。
 ジョンは、(IQがゴーレムより高いので、ゴーレムがラーケンを狙うことは分かっているが)何もしないのもアレなので、とりあえず防御に専念。
 ゴーレムはラーケンを狙うが、これまた当たらない。
 そして、友好的な状態で呼び出された土のエレメンタルは、「アース・テンタクル」でアイアン・ゴーレムを捕らえた。

ジョン  ほほう、やるじゃないか、この泥まんじゅう。
トリステル  わたしのトモダチを馬鹿にするなー!(笑)

 こうなってしまっては、ゴーレムに勝ち目はない。
 第4ラウンドにはダメージの累積が衰弱ラインに到達。これにより、「アース・テンタクル」の効き目が切れたとしても衰弱によるペナルティが残るので、敗北は時間の問題となった。
 案の定、ラーケンと土のエレメンタルから受けたダメージが少しずつ積もり積もって、数ラウンド後には、ついにアイアン・ゴーレムは動かぬ鉄の塊と成り果てた。

(3)真鍮の鍵

GM  むぅ、ただの一発も当てられなかった。欲求不満だ(笑)。
ラーケン  でも、こっちもダイス目が悪くて、2点も疲労しちまったぜ。

 SSSでは、自分のSTで持てるギリギリの重さの武器を装備していると、その武器を使った判定ロールの出目が4以下だった場合、1点疲労してしまう。
 ちなみに、2D6で4以下が出る確率は、6回に1回。もしSTよりも1点軽い武器を装備しておけば、出目が3以下のときのみ疲労するので、確率は一気に半分(12回に1回)になる。STより2点軽い武器なら、疲労する確率は36回に1回と飛躍的に小さくなる。
 もし、呪文を頻繁に使うようなキャラクターならば、あえて軽い武器を選ぶというのも一つの選択かもしれない。実際、トリステルなんかは必要STが自分のSTよりも1小さいレイピアを主武器に使っている。

ジョン  オレとトリステルは、最初のラウンド以外は見てるだけだったな(笑)。
トリステル  わたしはプレイヤーとしては暇でも、キャラクターとしては忙しかったんだよー。「キュア・ウーンズ」をずっと準備してたんですから(苦笑)。
ラーケン  まぁ、おかげで安心して戦えたぜ。
トリステル  1ラウンド待たせたせいで手遅れになっちゃうことだって、ありえますからね。

 「キュア・ウーンズ」は、2ラウンドの集中と2点の疲労が必要な呪文。しかし、重傷を負った者は少しでも早く治療したほうが良いのは、言うまでもない。だからといって、集中を1ラウンド短縮して1ラウンドで呪文を発動させようとすると、1点余分に疲労してしまう。
 そこで、まだ余裕のあるうちから呪文の詠唱を始めておくという手を使うことがある。こうしておいて、次のラウンドに「キュア・ウーンズ」が必要になれば、そのまま自分の手番に呪文を完成させる。逆に、もし「キュア・ウーンズ」が要らないならば、もう一度最初から呪文を唱え直してそのまた次のラウンドに備えるのである。
 「いつでも呪文を発動できるように、ずっと集中を維持している状態」なので、絵的には割と格好良いんじゃないかと思うけど、何しろ呪文が要らなかった場合にはそのラウンドの行動手番を丸々無駄にしてしまうのが痛い。また、プレイヤーとしてはいささか退屈であるというのも、この戦法の辛いところだ(苦笑)。

ジョン  そういや、ゴーレムが首から下げていた鍵はどうした?
ラーケン  おっと、そうだった! 拾い上げてみよう。
GM  鍵は真鍮でできているようだね。何に使うのかは、これだけでは分からない。
ラーケン  何にせよ、お宝をゲットするために必要な鍵であることは間違いねぇだろ。とりあえず、俺が持っておこう。
ジョン  よし、次はどう行く?
トリステル  素直に考えたら、カルロスさんからもらった地図でいうところの、この右上にある「宝」の部屋ですよね。
ラーケン  そうだな。おそらくこの真鍮の鍵は、その部屋に入るための鍵だろう。

 というわけで、3人は「宝」の部屋を目指す。とはいうものの、最短ルートと思われる通路は土砂崩れで進めそうにない。そこで、傾斜のある坂道を通った先の部屋を経由してみることにした。
 当然と言えば当然なんだけど、その部屋の手前の角にある四角い溝が気になるようで、みんなで散々ああでもないこうでもないと調べ倒した。しかし、残念ながらこの壁の仕掛けが作動するトリガーはここにはないし、いくら調べてもこれといったことは分からない。

ジョン  うーん、おっかしいなぁ。どう考えてもこの壁は「開く」と思うんだが…。
トリステル  で、巨大な球が出てきて、この傾斜のある通路を転がっていくという(笑)。
GM  (ち、モロバレじゃないか)
ラーケン  とりあえず、今ここで案じても仕方ない。この扉にも鍵が掛かってるらしいから、また「エンチャントくさび大作戦」でいくぞ!(笑)

迷走、そして名答

(1)鍵穴がない

 再び、扉をくさびで破壊する作業に没頭するラーケン。しかし、今度の扉はしぶとかったようで、2本のくさびを潰してしまった。

ラーケン  くそっ! これで残りのくさびは、たった2本か。下手すると、あと1つの扉すら開けられないかもしれんな…。
GM  大事に使いなよ。あ、そうそう。ジョンは「エンチャント・ウェポン」2発分の疲労ね。
ジョン  ぐはっ! オレ、だいぶ疲れてきたぞ(笑)。

 扉の中は、ガランとして特に何もない部屋だった。3人は向かいにある扉(こっちは鍵が掛かっていなかった)から、部屋を出る。

トリステル  この先が土砂で埋まってなきゃ良いんですけど…。
GM  通路を進んでいくと、右に分岐する三叉路に至る。しかし、そっちは土砂に覆われていて進めそうにない。
ジョン  右は土砂で埋まっているが、前になら進めると?
GM  そのとおり。おそらく、この土砂の向こうは最初のほうにあった例の十字路だろうと思う。
トリステル  ですね。手元のマッピングでも位置関係が合致しますし。
ジョン  よぉし、ツイてる。お宝はもうすぐだな。
ラーケン  こういうときこそ、落ち着くんだ。決して気を緩めることなく、注意しながら直進を続けよう。
GM  おっけー。そうすると、やがて扉の前に行き当たるね。

 GMの思惑をことごとく覆し、ついに「宝」の部屋へとたどりついた3人。しかし、その扉の前で、こんどは冒険者たちの思惑が外れることになる。

ラーケン  よし、まずは【聞き耳】。そして【捜索】の定番チェックだ。

 【聞き耳】はトリステルがエルフの耳でチェック。しかし、これといって何も聞こえない。
 そして、【捜索】は例によって罠の有無を調べるものだから、ラーケンが行なう。しかし、これまた罠はなさそうだという結果に。

ジョン  何か拍子抜けだな。ふたりともダイス目は悪くなかったし、本当に何も聞こえないし、罠もないんじゃないか?
ラーケン  ふむ…。こうなりゃ、さっさと真鍮の鍵を使ってみようか。
GM  (え? この扉、鍵はかかってないんだけど…)
トリステル  そうしましょう。
ジョン  だな。試してみて損はないだろう。
ラーケン  よし、じゃあ危険な罠があったときのために、体力には自信のある俺が鍵を挿そう。
GM  うーんとね…この扉に鍵穴らしきものはないね。
プレイヤー一同  な、何だってーーー!
GM  そんなMMRみたいな驚き方せんでも(苦笑)。
ラーケン  か、鍵穴がないって一体どういう意味だよ、キバヤシ!
GM  誰がキバヤシやねん(笑)。

 この「鍵穴がない」というGMのひと言によって、3人は長考に入ってしまった。その間、「一応、扉を開けてみよう」という方向には、一度として思考が向かなかったようである。
 まぁ、開けてみたところで、どうせ中には入れないんだけどね。実は、この扉には鍵も掛かっていないし、罠もない。簡単に扉は開くのだが、見えない結界が張られていて部屋の中には入れないようになっているのだ。
 だけど、そんなことはプレイヤーたちは当然ながら知るよしもない。

(2)レイダース・トラップ

トリステル  どうしましょう。エンチャントくさび、やってみます?
GM  (げ! 鍵が掛かってなくて、しかも簡単に開けられる扉をわざわざ壊す気かぁ?!)
ラーケン  くさびはあと2本しかない。地図の「宝」という文字が、最後の最後でフェイクだという陰険なオチも否定できないぜ。
ジョン  「エンチャント・ウェポン」のかけすぎで、オレもかなり消耗してるしな。
トリステル  そういえば、地図の裏にあった「亡骸(なきがら)は安らかに眠らせたまえ」って、どういう意味なんでしょうね?

 う! そ、それは…(苦笑)。
 「地図の右下にある骸骨を横にして地図を見なさい」という意味なんだけど…この3人は、そのヒントに頼ることなく地図の正しい見方を見つけてしまったからなぁ。御大層な文言だけが宙に浮いちゃってるという、GMとしてはちょっと悲しい状態なんだな(泣笑)。

ジョン  なるほど。確かに、その言葉については全然ノータッチだったな。
ラーケン  ここはひとつ、他の部屋も回ってみるか?
ジョン  賛成。どこかの部屋にアンデッドがいて、そいつを斃せってことかもしれない。
トリステル  ハッ! どうしましょう、まさかハンタスの亡霊と戦うなんてことは…。
ジョン  怖いこと言うなよ。力のある魔法使いだったらしいから、シャレにならん(苦笑)。

 嗚呼、しかも「亡骸を眠らせる」という意味を誤解されちゃってるし…(涙)。まぁ、GMが思うようには事が運ばないのがTRPG。だからこそ、面白いんだけどね。
 何にせよ、他の部屋を調べるという方向性を打ち出した3人は、必然的に、地図の左下にある大きな部屋に注意を向けることになった。

ジョン  ここ、露骨に怪しくね? この部屋だけ、あきらかにデカいもん(笑)。
トリステル  ここから引き返していくとしたら、一番近い部屋のうちのひとつがそこですし、どうせだからその部屋から調べましょうか。
ラーケン  そうするか。いま思えば、その扉に向かえば、傾斜の通路や例の壁の溝とが背後に来ることになるしな。
ジョン  なるほど。あの壁が開いて傾斜のある通路を転がりながら、扉の前まで…という寸法か。
トリステル  だったら、やっぱこの部屋は避けます?(苦笑)
ラーケン  ち、これだから素人は。罠があるってことは、そこが重要な場所だってことだろうが。
ジョン  あるいは、侵入者を排除することだけを目的とした、陰険な「デス・トラップ」かもな。
ラーケン  そんときゃあ、そんときだ。トレジャーハンターたる者、危険を恐れてちゃあ商売にならねぇぜ!

 3人は、転がり来るであろう巨大な球についての対処法を検討するが、妙案は浮かばなかった。
 途中、ラーケンが「ここはデストラップの可能性もある。宝探しが目的である俺たちはともかく、お嬢ちゃんは無理に付き合うこたねぇぞ」とトリステルに伝えるが、トリステルは何か思うところがあったらしく、結局は3人全員で扉の前へ。

GM  この扉には鍵穴がある。サイズからして、真鍮の鍵を挿し込めそうな気がするね。
ラーケン  (トリステルに向かって)開けるぞ。本当に良いんだな?
トリステル  ええ、行きましょう。
ラーケン  よし、鍵穴に鍵を挿して回す!
GM  すると、その瞬間、背後のほうで地響きのような音がして、やがてゴロゴロと大きなものが転がってくるような轟音が響き始める。
ジョン  くそ、やっぱりか!
ラーケン  走って三叉路まで戻り、脇道へ飛び込むか? それとも、扉の中に逃げ込むか?
GM  轟音はどんどん近づいてくるね。背後を見れば、巨大な球体が転がってくるのが見えるぞ。
ラーケン  ええい、俺は扉の中へ飛び込む!
ジョン  こりゃしょうがない、オレも続く!
トリステル  待って、わたしも!

 扉の中に飛び込んだ3人は、すかさず扉を閉める。さらに、球が扉を打ち破らないとも限らないので、念のために扉の傍から飛び退く。その直後に、閉じた扉の向こうでズズゥゥゥン! という轟音が響き渡る。
 幸か不幸か扉が打ち破られることはなかったが、必然的にこの扉は大きな球によって塞がれてしまったことになる。

(3)なぞなぞ悪魔

ラーケン  後戻りはできそうにないか。とにかく、この部屋の様子を把握しよう。
GM  おっけー。この部屋は、アイアンゴーレムがいた部屋と同じく、魔法的な光源が確保されているようだ。ただ、30m四方くらいあるので、広さは比べ物にならない。
トリステル  広いなぁ〜。何か変わったモノはないですか?
GM  変わったモノはないけど、変わったモノなら部屋の中央付近に座ってるよ。
ジョン  まさか、ハンタスの亡霊とか。
GM  【知識/モンスター】か【信仰】でロール値を出して。【知識/一般】や【知識/伝承】の−2でも良い。
トリステル  【信仰】でも識別しうるということは、やっぱりアンデッドなんじゃ…。

 このGMが言うところの「変わったモノ」の正体はダーク・エージェントという悪魔である。初級冒険者にとってはかなり危険な状況だ。
 しかし、3人のロール値はそろってふるわず、誰一人としてこの「変わったモノ」が何なのかが分からない。

GM  邪悪な雰囲気とかなりヤバそうな気配を漂わせたモンスターは、君たちを見るとすぅっと立ち上がり、「久しぶりに愚か者どもが迷い込んできたか。我が名はダーク・エージェント」と語りはじめる。
トリステル  うわー、ヤバすぎるー。ダーク・エージェントはヤバいですよぅ。
GM  プレイヤーは知ってても、キャラクターには分からないんだぞ。そのつもりでプレイするように。
ジョン  何だ、このヤギ頭? オレ様が成敗してくれようぞ!(笑)
ラーケン  まぁ、待たねぇか。このヤギ野郎、何か俺たちに伝えたいんじゃねぇか?
トリステル  うーん、確かに。神官としてはかなり心理的な抵抗がありますが、まずは慎重に様子を伺いましょう。
ダーク・エージェント(GM)  魔術師ハンタスの命(めい)により、汝らにふたつの謎をかける。
トリステル  おっと、これはリドルってやつですね。
ダーク・エージェント(GM)  ひとつを解かば、汝らはこの部屋から無事に出られようぞ。ふたつを解かば、宝の部屋の結界が解かれん。もし、ひとつすら解けぬ愚か者であれば、この部屋からは生きては出られぬ。
ジョン  むむむ…。出口は巨大な球で塞がれちまってるし、ここはどっちみち受けて立つしかないよなぁ。

 そう、3人には選択の余地がない。
 謎をふたつ解きさえすれば、ここから無事に出られるし宝の部屋の結界も解かれるというのだから、とにかく謎とやらにチャレンジしてみるのが利口というもの。戦うのは、謎が解けなかったときの最後の手段だ。

ラーケン  よし、聞かせてもらおうじゃねぇか。
ダーク・エージェント(GM)  よかろう、では行くぞ。「立っている者には、背を伸ばしてもいくら首をひねろうとも、あるいは鏡のような道具を使おうとも、決して見ることができないものは何か?」
ラーケン  (2秒くらい考えて)「足の裏」だな。
ジョン  おお、なるほど!

 ち! 少し簡単すぎたか? 有名なナゾナゾだもんなぁ…。
 そんな中、感嘆してくれるジョン君が愛しい。実に愛しい。

トリステル  これで、この部屋から出るための権利は獲得できたんですよね?
GM  うん。悪魔は何やらゴニョゴニョと呪文のようなものを唱える。すると、扉の向こうでゴロンゴロンと重たい音が聞こえる。どうやら、例の大球が元の場所へと戻っていくようだ。
ジョン  うへぇ〜、魔法で何度でも使える罠にしてるのか! ハンタスって魔法使い、凝りすぎ(苦笑)。
ダーク・エージェント(GM)  では次。「目的地へ向かって走れば走るほど、なぜかどんどん遠ざかるものは何か?」
トリステル  (5秒くらい考えて)「最初に立っていた場所」ですかねぇ。
ジョン  おお、そうそう、オレもそうじゃないかと思ってたんだ!

 本当かね、ジョン君(笑)。

ラーケン  そうだな。言い回しが気になるが、理屈が合ってれば「スタート地点」「出発地点」などでも正解にするのが、リドルのルールだからな。
トリステル  では、ファイナル・アンサーですね。
GM  了解。そうすると、ダーク・エージェントは先ほどとは違う呪文を唱えたのち、「結界は解かれた。わたしもようやく永き退屈とおさらばできる…」と言い残して、シュルシュルーーーポンッ! と消え去る。
ジョン  使役から解放されて、魔界へ帰ったってことか?
GM  そんな感じだね。
ラーケン  うーむ。数百年も拘束されてたのかと思うと、悪魔といえどもちょっと哀れだな。

アブノーマル映像(笑)

(1)微妙なお宝

 3人は、ダーク・エージェントの部屋を後にして、例の「宝」の部屋を再び訪れた。

ジョン  さあ、これでこの扉が開くんだよな?
トリステル  さっきの悪魔は、それらしいことを言ってましたよね。
ラーケン  よし。例によって俺が扉を開けてみよう。
GM  何の苦もなく扉は開くよ。
プレイヤー一同  よっしゃーーー!

 いや、だから、扉はもともと簡単に開くんだってば(苦笑)。

GM  中は24m四方の部屋で、ゴーレムや悪魔がいた部屋と同じように魔法によって明るく保たれているね。
ラーケン  敵らしきものは?
GM  ぱっと見た感じでは、見当たらない。部屋の中央付近に台座があって、スクロール数本とペンダントのようなものが置かれているのが見える。
ジョン  おお、スクロール、欲しい!
ラーケン  まぁまぁ、慌てるな。十分に警戒しながら近づいていこう。どうするみんな、来るか? ヤバ目のトラップがあるかもしれねぇが?
トリステル  ここまで来たんですから、固まってましょう。バラバラになっていたところで、それなりのリスクがありますし。

 そろりそろりと警戒しながら、台座のすぐ近くまでやって来た3人は、台座に刻まれた文字のようなものに気付く。

GM  これを読めるのは、ジョンだけだね。読んでみる?
ジョン  もちろん。
GM  「我ハンタスのもっとも大切な宝とは、この知識なり。ここに知識を封じたる護符を遺す。之を首に下げし者、己が知識及ばざるときに念じよ。我が知識及ぶ限りその助けとならん。ただし魔力を引き出さんとせば己が疲弊を伴うことを忘るるなかれ」と書かれているよ。
ラーケン  知識が宝だとう? 洒落たこと言いやがって(笑)。
トリステル  文言から判断するに、この護符のペンダントを着けてれば、ハンタスさんの知識が借りられる、ってことですよね。
ジョン  文言を素直に解釈すれば…知識関係のロールに失敗したときなんかに、ハンタスの知識で再ロールできるっぽいな。
ラーケン  そして、その際には疲労ダメージを伴うってわけか…。とりあえず、俺は金銭的な価値を【鑑定】してみるぜ。ロール値は14だ。
GM  うーん、魔法の品だから魔術師ギルドで売ることになるけど、100GP前後で買い取ってもらえそうな気がする。
トリステル  あら、意外と安い。
GM  知識をごっそり授かるわけじゃないし、疲労を伴うのが致命的だね。それと魔術師ギルドは魔法の品の流通を独占的に統制してるから、買い叩ける立場にある。
ジョン  というと? 魔術師ギルド以外に持ち込めば、値が上がるってことか?
GM  それなりにアングラな行為だよ、それって。しかも、魔術師ギルドに睨まれるリスクを負いたがる買い手は少ない。

 魔術師ギルドは、何も営利目的で魔法の品の流通をコントロールしているわけじゃない。
 例えば、現代日本において拳銃や爆薬といった危険な品が簡単に手に入っちゃうとしたら、大抵の人が安心して暮らせないだろう。あるいは、医薬品のように専門知識が必要な品が無秩序に売られていたんじゃ、消費者は粗悪品を買わされたり健康を損なうなどの損失・被害を被る可能性だってある。
 魔術師ギルドにしても、魔法の物品が無闇に市場で取り引きされることがないよう、治安維持の目的でこうした規制を行なっているのだ。

ラーケン  このアミュレット、いざというときには魔術師ギルドで換金するとしても、今んところは俺が預からせてもらっちゃマズいか?
ジョン  オレはかまわんよ。それよりスクロールが欲しいんだ(笑)。

 SSSファンタジーでは、精神魔法の呪文はいくらスキルLVを上げようとも、自動的には覚えられない。自分の手で魔法のスクロールを収集するしかないのだ。だから、魔術師にとって、スクロールが手に入らないシナリオは骨折り損といっても過言ではない。
 GMをやるときには、シナリオの中に「スクロールを手に入れられるチャンス」を必ず盛り込でおこう。そうでないと、精神魔法の呪文がいつまでたっても増えない、なんてことになりかねない。
 このシステムは、かなりゲーム的だし精神魔法の使い手にとってはシビアなんだけど、「苦労して集める作業」というのは意外に楽しかったりするんだよ、コレが。

(2)ソイル・クロウラー乱入

ジョン  スクロールは「クリアボイアンス」と「ロック」だったよ。
トリステル  ホクホクですか?
ジョン  そうでもないな。オレのLVだと「クリアボイアンス」はまだ使えないし、「ロック」はすでに修得済みだし(苦笑)。

 手に入ったスクロールの本数・呪文LV・系統・呪文名などは、原則としてダイスでランダムに決定される。つまり運が悪ければ、ここでのジョンのように、すでに知っている呪文のスクロールが手に入ったりするなど、「ハズレ」を引いてしまうこともありえるわけだ。
 ちなみに、要らないスクロールは魔術師ギルドが買い取ってくれるし、望むなら要らないスクロール2本と好きなスクロール1本とを交換してもらうこともできる。

ジョン  一応、こいつはオレが貰っといても良いか?
ラーケン  俺はかまわんが。しかし、そうなるとトリステルの取り分というか“担保”がなくなっちまうな。
トリステル  プレイヤーとしては嫌なんだけど、キャラクターとしては固執しませんよ(泣笑)。
ジョン  いや、アンフェアすぎるだろ。「ロック」は魔術師ギルドで買い取ってもらおう。
トリステル  だけど、要らないスクロール2本で任意のスクロールと交換してもらえるんでしょ。置いとけば?
GM  (こっそり3人ぶんの【聞き耳】をロールして…)なんてことをお宝を前に話し合っていると、トリステルの耳にかすかな地鳴りのような音が聞こえた気がする。
ジョン  トリステルの「エルフイヤー」が何かとらえたみたいぞ!(笑)
トリステル  まさか崩落するんじゃ。
GM  と、次の瞬間、君たちが入って来た扉付近の天井がガラガラと崩れて、何かが部屋に侵入してきた。
ラーケン  しまった、油断したっ!
GM  【知識/モンスター】か【知識/動物】で識別して。【知識/一般】【知識/伝承】なら−2でどうぞ。

 こいつは「ソイル・クロウラー」という巨大な芋虫のようなモンスターで、衝撃を与えると汚液を撒き散らすという厄介なヤツである。
 知名度(識別の判定ロールの際の難易度)が大きいので、正体不明のまま戦闘に持ち込める…というのがGMの狙いだったのだが、ここで、なんとラーケンが6ゾロを振るというミラクル。ロール値は足りていないので「+0成功」扱いではあるものの、ラーケンはこのモンスターの名前とおおよその特徴を知っているということに。

ラーケン  臭せぇ汁を撒き散らすって最悪じゃねぇかよ。こんなんと肉弾戦するのは嫌やなぁ(苦笑)。

 あいにく、巨大芋虫は入り口近くに陣取っているので、斃すか動かすかしなければこの部屋から出られそうにない。やむなく、3人は、ラーケンを前面に戦闘態勢を整える。
 行動宣言は、IQがみんなバラバラなので、ソイル・クロウラー、ラーケン、トリステル、ジョンの順で問題ない。行動順は、移動力が同じ者が多いのでD6で優劣をつけ、トリステル、ラーケン、ソイル・クロウラー、ジョンという順になった。

 第1ラウンド。
 トリステルは、土のエレメンタルを召喚。しかし、残念ながら中立の状態で呼び出してしまった。
 ラーケンはソイル・クロウラーが移動攻撃してくることを察知した(ラーケンの方がIQが高い)ので、これを迎撃することに。移動攻撃に対する迎撃は、行動順がラウンドの最後になってしまうが、間合いを詰める作業を相手にさせられる。つまり、移動によるペナルティ(ロール値−2)を受けずに済むのだ。
 そして、そのソイル・クロウラーの移動攻撃は、ラーケンにギリギリで避けられてしまう。

GM  くっそぉ〜。移動攻撃でなければ、ヒットしていたのにぃ。今日はまだ一撃も与えてないよ(苦笑)。

 続いて、ひとりだけ行動順が遅いジョンの手番だが、ここで彼の手のひらから淡い光が伸びていき、ラーケンのバスタードソードを包み込む。「エンチャント・ウェポン」の呪文である。
 そしてラウンドの最後は、迎撃態勢によって行動順が下がっていたラーケンの攻撃。行動順が遅れたおかげで、エンチャント・ウェポンの恩恵を受けての攻撃となった。

ラーケン  よっしゃあ〜、待ちくたびれたぜぇ。喰らえ、化け物! 両手持ちエンチャント・バッソ(=バスタードソード)!

 ソイル・クロウラーはこのラウンドに移動攻撃を行なっているので、回避にも−2のペナルティがくる。しかも、プレイヤーは知らないだろうが、図体がでかいモンスターなだけに回避はもともと得意でない。ラーケンの出目が3だった(当然、疲労ダメージ1点)にも関わらず、エンチャント・バッソは見事命中、ソイル・クロウラーに12発のダメージを与える。  しかし、このモンスターの本領発揮は、ここからなのだ…。

(3)スカ!

ラーケン  どっせぇぇいっ! 見よ、この破壊力ゥ!
GM  奇声を挙げて歓喜しているところ悪いけど、口は閉じといたほうが良いよ。衝撃で盛大に汚液が飛び散るから。全員WP抵抗してね、難易度は24。
トリステル  何ですか、その難易度の高さは! わたし、余裕で失敗ですよ。
GM  受けたダメージ(衝撃)によって、飛び散る汚液の量が違うんだよ。
ジョン  6ゾロ以外、成功しないよ。…はい、失敗(笑)。
ラーケン  うむ、俺も失敗。これはヤバいかな?

 結局、全員が難易度に4以上足りないロール値で抵抗に失敗し、あまりの悪臭に全員が酷い眩暈を覚える(次のラウンドはロール値−4)。
 汚液を直接あびてしまったラーケンは、さらに視力を使うロールに−1(きれいに汚液を拭い去るまで!)のペナルティを受け、なおかつ次からの4ラウンドは咳き込んで喋れないという状況に陥る。

GM  ちなみに、ラーケンは頭から人糞に似た強烈な悪臭を放つ茶色い粘液をどっぷりと浴びて、酷い有り様だよ。
ジョン&トリステル  うわー。エンガチョ! エンガチョ!(笑)
ラーケン  (プレイヤー、素にもどって)スカですか。しかもこんなムサ苦しい大男の(苦笑)。
ジョン  リプレイ化するシナリオでは読者サービスで下ネタを入れると聞いてたが、こりゃ激しく間違った方向だな(笑)。
トリステル  ちっとも読者サービスになってないですね(笑)。
ジョン  なんてったって、野郎のスカだもんなぁ。非常に小さいパイを狙ったニッチ戦略。
GM  いやいや、そんなつもりは毛頭ないんだけど、そうなっちゃった(苦笑)。
ラーケン  せめて犠牲者がトリステルだったら、たまらん人にはたまらんのじゃないかと思うがな(笑)。
トリステル  絶対、イヤ!

 猛烈な悪臭と飛び散る汚液の中、阿鼻叫喚の戦闘は第2ラウンドへ突入。全員が悪臭で眩暈を覚えているパーティは、積極的な行動を避け、態勢を立て直すのに必死である。
 まずトリステルが、ラーケンが負傷した場合に備えて「キュア・ウーンズ」の準備。
 そのラーケンは防御に専念するも、汚液の影響もあって攻撃を避け切れず、かすり傷を負う。
 一歩遅れて、ジョンからラーケンに「プロテクション」。
 中立反応の土のエレメンタルは、トリステルからの指示がないため待ちぼうけ。
 さらに、悪臭が喉を刺して咳が止まらないラーケンは、ラウンドの最後に1点疲労してしまう。この咳は、まだあと3ラウンドの間は止まらない。

ラーケン  くそう、疲労ダメージの蓄積ってのは、地味に心理的な圧迫感があるなぁ。ゲホゲホ!

 第3ラウンド。
 ラーケンの累積ダメージが許容範囲内と判断したトリステルは「キュア・ウーンズ」をキャンセルし、土のエレメンタルを「コントロール・エレメンタル」で「友好的」に変化させる。
 続くラーケンは、ここで連続攻撃という勝負に出る。1ラウンド目の攻防で、ソイル・クロウラーの回避能力はかなり低いはずだと目星をつけたらしい。
 連続攻撃は、1体の目標に対して2回(あるいは2体の目標に1回ずつ)攻撃できるかわりに、命中のロール値が−2される。おまけに、ラウンドの最後には1点の疲労ダメージまで被ってしまうので、「攻撃が一度も当たらず疲れただけ」という悲惨なオチもありえる。使いどころが難しいオプションなのだが…。

ラーケン  えーと【接近戦】が7LV、連続攻撃で−2、汚液で−1だから…ベースは4か。
トリステル  そんな数字で、本当に大丈夫なんですか?
ラーケン  俺の計算では当たらない数字じゃないはず。というより、気合いで当ててやるっ! 10と13!
GM  (コロコロ…コロコロ…)あかん、両方とも当たってる…。
プレイヤー一同  キターーーーーーーーーーーー!!
GM  くそう、こりゃあ終わっちゃうか!?
ラーケン  ダメージ喰らえぃ! 10発&14発ぅ!
GM  えーっと…。あらら、やっぱり。芋虫は激しくのたうち回ったかと思うと、ぐったりとして動かなくなったよ。
トリステル  うわー! ラーケンさん、すごいっ!
ジョン  (おちょくった感じで)うわー! ラーケンさん、くさいっ♪
ラーケン  あー、もしもし、GM。この身体でジョン君に抱きつきたいんだが、どういう判定すりゃ良い?
ジョン  ひえぇぇぇっ、それだけは勘弁してくれ〜!(笑)

冒険者たちの夜

(1)サービス、サービスぅ♪(古っ

 ラーケンが最後に与えた合計24発ものダメージで再び盛大に飛び散った汚液については、何となくノリで「ものすごい量」の汚液1回分として、難易度36(!)のWP抵抗で処理した。
 この結果、ラーケンの咳はさらにあと4ラウンドも続くことになった。当然、咳き込んでいる間は、毎ラウンド1点ずつ疲労してしまう(苦笑)。
 一方、昏倒状態ながらもピクピクとまだ生きている様子のソイル・クロウラーについては、ラーケンが汚れついでに止めを刺した。

ラーケン  「ええい、忌々しい芋虫めが!」と吐き捨てて、グサリ。
GM  さすがにこの作業では、勢いよく汚液が飛び散ることはないだろうし、WP抵抗はなしにしよう。
ラーケン  ああ、ぜひそうしてくれたまい(苦笑)。
ジョン  ところで、コイツ、天井を崩して飛び込んで来たんだったよな。出口は大丈夫かな。
GM  大丈夫。瓦礫や土砂が床に散らばっているけど、十分に乗り越えていけそうだ。
トリステル  じゃあ、最初に降りて来た縦穴まで、戻りましょうか。
ラーケン  その前に。とりあえず、俺はマントで身体を拭っておくわ。帰りのロープ登攀で滑ったりしたら困る。
ジョン  げー。そのマント、もう使えないな。
ラーケン  なぁに、周りは海だ。洗って持ち帰るぜ、俺は。

 なんてことを言っているうちに、3人はこの地下に最初に降り立った地点まで引き返した。目の前には、降りるときに使ったロープがぶら下がっている。

ジョン  ちょっと待て。帰りは当然、降りてきたときとは順番が逆だよな。
ラーケン  そうなるな。まず俺が自力で登る。次にトリステルを引き上げて、最後に2人でジョンを引き上げる。
ジョン  てことはアレか。ラーケンが臭いニオイを擦り付けながら登った後のロープでオレたちは引き上げられるのか。
GM  どうしたって、そうなるだろうね。
トリステル  これはもう、仕方ありませんよ(苦笑)。
ラーケン  ガタガタうるせぇぞ。この際、観念しやがれ。
ジョン  たまらんなぁ〜(苦笑)。

 こうして、どうにかこうにか無事に地上に戻ってこられた3人。
 地上では、すっかり日も暮れていたが、【知識/野外活動】がない3人には正確な時間帯まではよく分からない。
 まだ迎えの船までは時間がありそうなので、3人は石の落とし戸を元に戻し、上から軽く土を被せておいた。そうしておいて、あとで魔術師ギルドなり神殿なりにこの地下をどう処分するか決めてもらおうというつもりである。
 それから迎えを頼んでおいた約束の岸辺へと向かったのだが、船は当然ながら着ていない。するとここで、夜明けを待つまでの間に身体を洗っておこうと、ラーケンが素っ裸になって真っ暗な海へ(笑)。

ラーケン  うひゃあ、やっとサッパリできるぜ。
トリステル  ちょっと、いきなり脱がないでくださいよっ!
ラーケン  見たくないなら見るな。見たきゃ勝手に見やがれ、だ。
トリステル  見ません!
ラーケン  むふう〜、じつに気持ちが良い! おらおら、読者サービスだぜー!
GM  そうか、このパーティのお色気担当は、ラーケンお兄さんだったのか(笑)。
ジョン  だから方向性を間違えてるってば(笑)。

 あ、モニタの前のあなた、お願いだからブラウザを閉じないで!(笑)

ラーケン  おっと、そうだ。布モノなんかは一応洗っておくぜ。金属類は…錆びるから洗わないほうが良いだろうなぁ。
GM  どっちにしろ、少々洗ったくらいじゃ、しばらくニオイは残るだろうけどね。
ラーケン  洗わないよりはマシさ。ゴシゴシ、ザブザブ、バシャバシャ。
トリステル  うーん。この近海の魚は、しばらく食べないほうが良さそうですね(苦笑)。
ジョン  オレたちだけの秘密だな(笑)。

(2)ルーザッタへの帰還

 翌朝、迎えの舟で漁村に帰った3人は「安全が完全に確認できたわけではないので、もうしばらくは島に近づかないように」と告げて、その足でルーザッタへと舞い戻ります。

GM  では、例によって街道沿いの描写はすっとばして、ルーザッタに到着だ。
ジョン  帰りも早っ(笑)。
GM   (素に戻って)もう外は真っ暗やんか。俺、腹減ってん。巻きで行くで、巻きで(笑)。
トリステル  では早速ですが、わたし、神殿の上役に報告に行きます。報酬のこともあるし、2人もついて来ます?
ジョン  別に、断る理由はないよな。
ラーケン  当座の金に困ってるから、報酬はしっかり頂いておきてぇ。
ジョン  出発前は「神殿からの報酬なんて誤差みたいなもんだ」とか行ってたくせに(笑)。
ラーケン  アテが外れちまったんだから、仕方ねぇだろう。

 GMの胃袋がグゥグゥとうるさいので、舞台はたちまちリト神殿へと移る。

トリステル  司祭さまぁ〜、ただいま戻りましたぁ、トリステルです〜。
上役の神官(GM)  おやおや。お帰りなさい、トリステル。首尾のほうはどうでしたか。
トリステル  かくかくしかじかで、ものの見事に危険でしたから(笑)、こちらの2人に危険手当も払ってあげてください。
上役の神官(GM)  そうでしたか。もちろん、お礼のお金は約束どおりお渡しましょう。
ラーケン  へへ、毎度ありぃ。また頼んます〜。

 誰やねん(笑)。

ジョン  トリステル、島の地下の後始末についても確認しておいた方が良いんじゃないか?
トリステル  あ、そうでした。えーと、差し出がましいことを訊くようですが、島の地下はどうなさるおつもりですか?
上役の神官(GM)  あなたの報告を聞く限り、もはや完全にわたしたちの領分ではありません。今度は、逆に魔術師ギルドに投げ返しましょう(笑)。
トリステル  こんなことで、この国の治安は大丈夫なんでしょうか(苦笑)。

 神殿に報告を終えて、約束どおりの報酬を支払ってもらった一行は、今度は魔術師ギルドへと向かう。

トリステル  本当に売っちゃうんですか、それ?
ジョン  ああ。どのみち、もう少し手持ちの金はあったほうが良いしな。
GM  「ロック」のスクロールだったね。えーと何LVの呪文だっけ?
ジョン  確か7LV。
GM  …てことは、7×7×7だから…。えーと、343か。
ラーケン  GP?
GM  SP!(苦笑)
トリステル  つまり、34GPと3SPで買い取ってもらえたということですね。
ジョン  スクロールは欲しいが、この換金率の良さも魅力だな。悩ましいぜ。
ラーケン  (まるで興味がないらしく)…さて、では収穫の分配といくか。

 34GP(スクロール換金分)+10GP×2人分(神殿からの報酬)=54GP。これが、今回の「宝探し」で手元に残った現金である。
 苦労のわりには実入りが少ない気もするが、パーティの共有財産として「知識のアミュレット」を換金しないでおくことにしたので、このようになった。

(3)祝いの美酒

 3人は、この現金をフィールズ施療院も頭数に入れて4等分するという。カルロスを担ぎこんで迷惑も掛けたし、少しでも寄付しようというのだ。

ラーケン  まぁ、一宿一飯の恩があるからな、あそこには。
GM  自分たちの生活もギリギリなのに、なかなか良いヤツやね、みんな。
ラーケン  それに、今後も泊めてもらうようなことがあるかもしれないし(笑)。
ジョン  好感度を上げとけば、いつか絵のモデルになってくれるかもしれないし(笑)。
GM  そういう魂胆かよ!(苦笑)

 前言撤回! 冒険者なんて、ロクデナシばっかりだ!(笑)

トリステル  しかし、54÷4だと13GPずつで余りが2GP出ますね。
ジョン  それは、みんなでパァっと呑もう。
ラーケン  良いねぇ〜! でも、その前にカルロス爺さんに会いに行かねぇか?
ジョン  おお、そうだ。もとはと言えばあの爺さんから始まったんだよなぁ、この冒険は。
ラーケン  地図の礼くらいは言っておかねぇとよ。それに、俺はあの爺さんが生きているうちに【開錠】を教わっとくつもりなんだ(笑)。
ジョン  今回はそれがなくて、苦労したからなぁ(苦笑)。
トリステル  そういえば、カルロスさんの分け前を忘れてましたね。
ラーケン  いや。爺さんの取り分は、施療院に渡す分で十分だろう。最期を看取ってもらうんだから、爺さんとしても異論はねぇはずだ。
ジョン  ソフィアさんに許可をもらって、一緒に酒でも呑もう。それが爺さんの取り分だ。

 というわけで、最後に3人は施療院にやってきた。相変わらず施療院は忙しそうだが、ソフィアさんは笑顔で出迎えてくれる。

トリステル  「少ないですが、院で使ってください」と言って、金貨をソフィアさんに渡しましょう。
GM  ソフィアさんは目を丸くしているね。「どうしたんですか、こんなに!」
ジョン  オレたちが稼いできたんだけど、でもそれ、カルロス爺さんのおかげなんです。なので、今晩、お礼をかねてカルロス爺さんを酒の席に招待したいんですけど。
ソフィア院長(GM)  そうですねぇ…。少しくらいなら構わないでしょう。ただし、あまり無茶はさせないでくださいね。
ラーケン  ようし、許可が出たぞ。おーい。カルロス爺さん、いるかー?
GM  すると、奥から「おお、お前さんらか」と言ってカルロスが現れる。規則正しい生活のおかげか、顔色も良いみたいだね。
トリステル  お元気そうで良かったです。怪我はもう良いんですか?
カルロス(GM)  おかげ様で、この通りじゃよ。ところで、お前さんら、しばらく姿を見なかったが?
ラーケン  おう、今日はその話で来たんだ。それがな、爺さん。いいか、聞いて驚けよ…。
ジョン  ちょっと待った! その先は酒でも飲みながら、だろ?

◇ ◇ ◇

 こうして、駆け出しの冒険者たちによる初めての「冒険」は幕を閉じた。
 今はまだまったく無名の彼らだが、これからもきっと「冒険」を重ねていくことだろう。幾多の危険を乗り越えて生き残っていくことができたなら、彼らの名は多くの人たちが知るところとなるはずだ。もっとも、そのためには、運と実力の両方に恵まれていなければならないのだが。

 もしかすると、この夜の酒が「英雄たちの第一歩を祝ったささやかな宴」として、吟遊詩人たちに詠われる日が来るのかもしれない。





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