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ファンタジー/オリジナル・シナリオ

聖杯の行方

1.はじめに

 このシナリオは、初期作成のキャラクター3〜4人を想定したダンジョンシナリオです。キャラクターの作成はすでに済んでおり、またパーティは結成済みであるという前提で、おおよそ3〜5時間程度のセッションを想定しています。しかし、実際には脱線や雑談の量によっては1〜2時間くらい余分に必要になるかもしれません。
 当初から戦闘を想定したシナリオですが、高レベルのNPC(ノンプレイヤー・キャラクター)の助力を得られる設定にしてあるので、その難易度は決して高くはありません。初めてTRPGを遊ぶゲームマスターやプレイヤーにはおすすめのシナリオです。
 PCの数が多い場合や能力値に恵まれたPCが含まれるような場合には、GMはモンスターの数やレベルを上げる、さらには高LVのNPCの助力を得られないようにするなどして、シナリオ全体の難易度を調整すると良いでしょう。

概要

 PCたちはブラックキール島南部、マステルルザ王国の王都ルーザッタである少女に出会います。彼女の正体は、ルーザッタの盗賊ギルド<双頭の白蛇>の幹部のひとりで、ロップイヤーという名のエルフです。彼女は自らの素性を隠し、「失くした聖杯を探したい」と冒険者を募っています。しかし、この依頼には裏があります。

 彼女はギルドマスターの命で、ある盗賊を追っていました。この盗賊はずいぶん前から<双頭の白蛇>に潜り込んでいたのですが、ギルドの長がその様子を怪しんで監視を付けていました。そのことに気づかなかったこの盗賊は、ある日、ギルドから「聖杯」を奪って逃げたのです。
 ロップイヤーはルーザッタ郊外の森で彼を捕らえますが、盗まれたはずの聖杯が見当たりません。盗賊を締め上げると、「途中で逃げ切ることを最優先にしようと考えて、かさばる聖杯は捨ててしまった」と白状しました。そこでロップイヤーは、「聖杯」を捨てた場所を訊き出すと賊をギルドに引き渡し、すぐさま冒険者を雇って聖杯を探すことにしたのです(ギルドが宝物を奪われたことは、ギルド内でもごく一部の者しか知らせておらず、これ以上の混乱を起こすことは避けたかったのです)。

シナリオのポイント

 このシナリオのポイントは、TRPGの華とも言える【戦闘】を楽しんでもらいつつ、ルールに慣れてもらうことにあります。GMは、「高レベルNPCによる過度の助力はプレイヤーの楽しみを奪いかねない」というとに注意してください。
 また、ロップイヤーの話には、つじつまのあわない部分があります。この点をそれとなくプレイヤーに伝えてみましょう。もっとも、仮に裏話に気づかなかったとしても、シナリオ攻略になんの問題もありません。
冒頭の準備
(1)PCのデータチェック = 「IQ+総合LV」や【聞き耳】【捜索】【第六感】のスキルLVなど、GMがクローズドで判定する可能性がある数値の把握。
(2)ゴブリンの巣窟の地図のプリントアウト(GM用)
(3)登場するモンスターの数値確認。

2.導入

 「白竜亭」では、ルーザッタの盗賊ギルド<双頭の白蛇>の幹部・ロップイヤーが、聖杯奪還の役に立ちそうな冒険者を捜しています。プレイヤーキャラクターたちが酒場に現れると、彼女のほうから接触してきます。
 彼女は、正体を隠すためにローブを深々とかぶり、特徴的な「垂れ耳」を隠しています。彼女の正体を見極めるには、【知識/裏社会】で難易度17の目標ロールに成功しなければなりません(ただし彼女の垂れた耳を見ることができれば、難易度は15になります)。

ドナ(ロップイヤー)の話

 彼女は「ドナ」と偽名を名乗り、ルーザッタとアイアンコールを行き来しながら商売をしている商人だと称します。その行商の途中でモンスターに襲われてしまい、逃げているうちに大事な積み荷を落としてしまったので、それを拾いに戻りたくて護衛を探しているのだと言います。
 護衛料は20GPですが、無事に積荷を回収できた場合には倍額を支払ってくれるそうです。
積み荷について
 失った積荷とは、木製の聖杯です。直径50pほどの大きさで、器の底に髑髏の装飾があります。
 積み荷を落とした場所は、ルーザッタとアイアンコールとを繋ぐ街道沿いにある小さな森の中だと言います。
モンスターについて
 ドナを襲ったモンスターについて「どのようなモンスターだったか」と尋ねると、彼女は少し口ごもります。そして、とっさに「身の丈が軽く2メートルを超える、人型のモンスターで大きな頭と脚よりも長い腕を持つ毛深いモンスターだった」とオーガの特徴を挙げてしまいます。
 彼女の説明がオーガを指すものであることに気づくには、【知識/モンスター】もしくは、【伝承】−2で難易度10の目標ロールに成功しなくてはなりません。10を越えれば確信はもてないものの、【オーガ】の特徴に酷似していることに気づくでしょう。ただし、特徴を口頭で説明してもらっただけなので、識別の際のロール値には−2のペナルティを加えてください。
商売について
 ドナは商人を自称しますが、商売について何も語ることができません。これらの話に発展した場合はあまり話そうとしないか適当なことを言ってごまかそうとします。

3.ルーザッタ郊外の森と農村

 ロップイヤーが盗賊ギルドから聖杯を奪って逃走した盗賊を捕らえた森は、ルーザッタから徒歩で1日ほどのところにあります。この森は小さな丘を覆う直径1qほどの森で、近隣の農村からは「ゴブリンなどの妖魔が棲む森」として恐れられています。実際に、まれにゴブリンたちが付近の村に降りてきて害をなすこともあるようです。ちなみに、森に一番近い農村には宿泊施設がなく、農村に一軒だけある酒場が旅人の拠り所です。
 これらの情報は、【知識/一般】で難易度12の判定ロールに成功すれば知っていたものとして構いません。このときロール値が14以上だったPCは、オーガのような大型のモンスターの目撃例はないということも知っています。

ゴブリンの足跡

 ロップイヤーが捕らえた盗賊は、この森のほぼ中心の大岩の近くで聖杯を捨てたと証言しました。その付近まで行けば、ゴブリンの足跡が発見できるかもしれません。ただし、足跡を発見するには、【捜索】で難易度12の目標ロールに成功しなければなりません。
 この足跡は、ゴブリンたちがこの付近をうろついていた際に聖杯を見つけ、持ち去ったときについたものです。

盗賊ナシアン

 村では、夜間を狙ってPCたちの目を盗んでドナに接触を試みる者がいます。彼女は<双頭の白蛇>の一員、ハーフエルフの盗賊ナシアンです。ロップイヤーの捕らえた盗賊が自害したため新たな情報を得られなくなったことを、ドナ(つまりロップイヤー)に伝えに来たのです。
 このイベントはシナリオの大筋には無関係なので、タイミングが合わなければ無理に描写しなくても構いません。

4.ゴブリンの巣窟

 森でゴブリンの足跡を発見できれば、【痕跡追跡】でさらに足跡を追跡することができます。難易度13の目標ロールに成功すれば、「ゴブリンの巣窟」まで追跡が可能です。
 ゴブリンの巣窟は、聖杯が捨てられた大岩から歩いて30分くらいのところにあります。なだらかな丘陵の途中で森が少し拓けており、その緩やかな斜面に自然窟がポッカリと口を開けています。
 もしゴブリンの足跡を見つけられなかったり、追跡に途中で失敗したとしても、ドナは「大岩を拠点に周辺をしらみ潰しにしたい」と強行に唱えます。それに従いさえすれば、半日から1日を費やすことと引き換えに怪しげな洞窟にたどり着くことは難しくないでしょう。

 洞窟へのアタックは、突入の時間帯(昼なのか夜なのか)と番犬のあしらい方によって難易度が変化します。少しややこしいですが、GMは相関関係をよく把握してマスタリングしてください。

 → ゴブリンの巣窟の地図

<1>巣窟の入り口

 巣窟に到着した時間によって、入り口の状況は少し変わります。
 日中に到着した場合は、見張りのゴブリン2体が洞窟の前で居眠りをしています。PCたちが接近を試みるなら、【忍び歩き】とゴブリンのIQとで比較ロールを行なってください。ただしゴブリンたちは居眠りをしているので、−4のペナルティを受けます。
 夜に到着した場合は、やはりゴブリン2体が見張りをしています。彼らはくだらない雑談や小競り合いのようなことをしているかもしれませんが、居眠りをしているということはありません。
ドナの行動
 依頼主であるドナは「入り口で待っているので洞窟内を確認してきてほしい」と言います。しかし実際は、【忍び歩き】で付いて行きます。各エリア(マップ上で番号が付いている場所)毎に、PCたちがドナが付いて来ていることに気づくかどうか、GMがこっそり判定するようにしてください。
 PCたちが危機的状況に陥ったときには、手助けしてくれます。

<2>小部屋A

 自然窟の小部屋になっています。ゴブリンたちが置いたと思われる荷物(ゴミにしか見えません)が散乱していますが、【捜索】する場合には難易度13の目標ロールに成功すれば、まだ使用できそうな「シェード付きランタン」が見つかります。
 この部屋には奥に続く通路が2本ありますが、その先はゴブリンたちが掘り進めたものであるらしく、通路がとても狭くなっています。これから先の通路部分は身を屈めて進まなければなりません。この低い天井は、PCたちには結構なハンディとなるでしょう。GMは適宜判断して、判定ロールのロール値に−2のペナルティを課すようにしてください。

<3>小部屋B

 ゴブリンたちが掘り広げたと思われる小部屋です。中には、1体のホブゴブリンと2体のコボルトがいます。
手前の曲がり角
 もしPCたちの突入が日中であれば、彼らはすべて眠っています。「<2>小部屋A」と「<3>小部屋B」との間にある曲がり角で難易度12の【聞き耳】に成功すれば、彼らのイビキが聞こえるでしょう。
 もしPCたちの突入が夜間であった場合、彼らはダルク語で何やらしゃべりながら昆虫を食べています。「<2>小部屋A」と「<3>小部屋B」との間にある曲がり角で難易度10の【聞き耳】に成功すれば、パリポリという乾いた音やクチャクチャと湿った音が聞こえてくるでしょう。
番犬の吠え声
 先に「<4>番犬の部屋」に向かっていて【大型犬】が吠えてしまった場合は、ホブゴブリンが「<4>番犬の部屋」に様子を見に来ます(コボルトは動きません)。PCたちの後ろには、ドナが付いて来ていることに注意してください。タイミングによってはPCたちとドナ、そしてホブゴブリンとの位置関係がややこしいことになりうるでしょう。
 一方、もし番犬をクリアするより先にこの部屋に訪れて戦闘になるようならば、「<4>番犬の部屋」で異変を感じ取った番犬が、大声で吠え騒ぐはずです。

<4>番犬の部屋

 ゴブリンが掘り広げた部屋です。ここには、ゴブリンが飼っている大型犬が3頭います。この犬たちは、侵入者に備えた番犬です。
 PCたちが部屋の入り口に近づこうとするなら、GMはこっそりと【聞き耳】で難易度10の判定ロールを行ないます。これに成功すれば、犬が唸っているような声が聞こえることを告げてください。
番犬の吠え声
 番犬たちは、PCたちが部屋に進入してくると、けたたましく吠えはじめます。
 この声を聞きつけると、「<3>小部屋B」からはホブゴブリンが、そして「<5>食糧庫」からはゴブリンたちが、それぞれ様子を確かめに来る可能性があります。また、「<6>曲がり角」ではショートボウを構えたゴブリンたちが侵入者に備えて不意打ちの準備を整えてしまいます(もし何らかの方法で番犬たちを吠えさせることなく突破できた場合には、「<6>曲がり角」での不意打ちは回避できます)。

<5>食糧庫

 ゴブリンが掘り広げた部屋です。食料庫として用いているようで、肉類・木の実・昆虫など、ゴブリンが食べていると思われる物が、粗末なテーブルに置かれています。腐っている食材もあるようで腐臭が微かに漂っていますが、いろんなものを一緒に煮込んだゴブリンシチューが放つ異様な臭いのほうが勝っているようです。
番犬の吠え声
 夜間に突入した場合、ここでは1体のゴブリンがご機嫌で食事をしています。「<4>番犬の部屋」で大型犬が吠えれば、このゴブリンは大急ぎでそちらへと向かいます。
 日中に突入した場合は、このゴブリンは「<7>大部屋」にいるため、ここには誰も(何も?)いません。

<6>曲がり角

 相変わらず天井が低く、狭苦しい通路です。この曲がり角では、「<4>番犬の部屋」の切り抜け方次第で、不意打ちが発生する可能性があります。
番犬の吠え声
 「<4>番犬の部屋」で犬が吠えていた場合には、この曲がり角に「<7>大部屋」から2体のゴブリンがやってきて、ショートボウを構えて待ち伏せの準備をしています。PCたちが「<5>食糧庫」とこの曲がり角との間にあるT字路に進入してきたら、すかさず彼らは弓を撃ちます。T字路への進入時に【第六感】で難易度15の目標ロールに成功すれば、−4で防御行動を取ることが可能です。目標ロールに失敗した場合には、一切の防御行動を行なえません(矢が外れてくれることを祈りましょう!)。
 ゴブリンたちは、PCたちが接近してくるようであれば、ショートソードで応戦してきます。

<7>大部屋

 この部屋もゴブリンによって掘り進められたようですが、他の部屋とは違いかなり大きく作られています。どこで盗んできたのか、壁にタペストリーや鹿の剥製が飾られており、床にも薄汚い絨毯が敷かれています。
 この部屋には、この巣窟の主であるゴブリン・サマナーがいます。その傍らには、問題の聖杯が大事そうに置かれています。
 また、普段はゴブリン6体とホブゴブリン1体も、この部屋で過ごしています。ただし、今がもし夜間であれば、ゴブリンのうちの1体は「<5>食糧庫」でつまみ食いをしているので、ここにはいません。
 戦闘になった場合、ゴブリン・サマナーは、前衛のゴブリンないしホブゴブリンの内いずれか1体でも倒されれば、次のラウンドには奥の通路へと退却を始めます。
番犬の吠え声
 もし「<4>番犬の部屋」で番犬が吠えていた場合、ゴブリン・サマナーは、あらかじめ「土のロー・エレメンタル」の召還を済ませています。ただし、PCたちがこの部屋に到着した時点では、残りの持続ラウンドが20ラウンドに減っています)。
 また、この部屋にいたゴブリンのうちの2体は「<6>曲がり角」に移動しているはずです(残っているゴブリンは、4体となります)。

<8>石造りの通路

 この辺りから突然、ゴブリンが掘り進めた通路ではなく石造りの壁になっています。これは、ゴブリンが掘り進めていくうちに、他の迷宮につながったためです。ただ、先へと通じる通路は木や石などで封鎖されています。これは「<9>扉」の手前まで続いていますが、時間をかければ障害物を退かして進むことができます。GMは、別の迷宮に繋がったように見えることや、封鎖されている向こう側に何かありそうだということを、それとなくプレイヤーたちに伝えるようにしてください。
 ゴブリン・サマナーが「<7>大部屋」から逃げてきている場合は、封鎖された袋小路の隅でガタガタと震えています。彼は、逃げられないと悟るや、なりふり構わず命乞いをしてきます。

<9>扉

 この扉には、難易度14の鍵がかかっています。罠は仕掛けられていません。

<10>ナイトメア・ハウンドの部屋

 石造りの大きな部屋です。ここには低級悪魔ナイトメア・ハウンドがいるだけで、他にはこれといって何も見当たりません(本当は、「<11>隠し扉」があるのですが、一見しただけでは何もない壁にしか見えません)。
 ナイトメア・ハウンドは、低くこもった声で「おぉ、侵入者とは何百年ぶりか。暇を持て余しておったのだ、楽しませてもらおうか」と独り言のように言い放つと、ゆったりと立ち上がります。

<11>隠し扉

 ここには隠された扉があります。【捜索】するなら、難易度13の目標ロールで発見できます。ただし、ゆっくりと時間を掛ける必要があるので、ナイトメア・ハウンドを斃すまでは、【捜索】することはできないでしょう。

<12>隠し部屋

 宝の隠された小部屋です。ここには小さな宝箱があり、中には、精神魔法のスクロール(通常のルールに則ってその本数やレベル、呪文の種類などを決定してください)と銀琥珀が2個(それぞれ内包するマナが2点と3点)、それと様々な硬貨で20GP相当が入っています。さらに小さな宝石が3つあり、【鑑定】で難易度10の目標ロールに成功すれば、そのそれぞれが10GP程度の価値があることが分かります。

5.帰還

経験点

 ゴブリンの巣窟から聖杯を持ち帰れたかどうかで、依頼主ドナ(=ロップイヤー)の態度と報酬が変わります。
聖杯を奪い返した
・基本経験点:各自5点

 ルーザッタまで一緒に帰ってきたドナは、正体を明かすことはありませんが「ありがとう♪一人で探すの嫌だったから助かったよ」と丁寧にお礼を言ってくれます。報酬は、約束どおり倍額の40GPです。
聖杯を奪い返すことができなかった
・基本経験点:各自4点

 ドナは、約束の20GPを渡すと森の出口で別れてしまいます。プレイヤーキャラクターと離れたドナは、ナシアンと合流して去っていきます。

注意

 ナイトメア・ハウンドに勝利しなくても、このシナリオの経験点に影響はありません。ナイトメア・ハウンドとの戦いは、このシナリオのクリアに必須ではないからです。


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